稲荷崎のオトン【ハイキュー!!】

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部室を出て、歩き出すと北が急にそれまでに話していたたわいもないことから話題を変えた。

「俺思ったんやけど」
「なんや急に」

夏が近づいているとはいえ、すっかり暗くなった空に北は目をやる。

「南と北って言うの、やめへんか」

北は一瞬目線をこっちにやったかと思うと、すぐに逸らして、それからもう目が合うことは無かった。


「だってほら、対や言うても、南はAのほうがええんやろ」

曖昧に言葉を濁して、明確な根拠を示さないあたりが、北にしては珍しかった。

「そしたら、北っていうのもバランス悪いやんか」


人間誰しも、名前で呼んでくれって言うのは難しいものだよな、と思う。
元はと言えば私もそれが言えなくて、結局南に落ち着いていた。



「信介」
「せや」
「信介、信介信介」
「なんやねん、やめい」


名前呼びがくすぐったくて、照れる北が可愛くて、おかしくて、2人で笑った。


この日から、私は北のことを信介と呼ぶようになった。

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