標的22 虹の力と終戦−３ ページ13
トーマ視点
ぱん！ と大きく手を叩く。
すると氷河は細かい光の粒子となって消えて行った。
――カラン。持ち主を失った雪のハーフボンゴレリングが、乾いた音を立てて地面に落ちた。
それを自分のハーフボンゴレリングと合わせ、一つの指輪を完成させる。
中指に嵌めると、それは磨かれたように光沢を放った。
空気の入れ替えをしていた通気口が静かになったのと同時に、ぷつん、とマイクの電源が入れられた音がした。
｢雪のボンゴレリングはトーマの物となりましたので、勝者はトーマとします｣
コンクリートの蓋が開けられ、消された照明の代わりに月の光が差し込んで来る。
ばたん、と倒れる音がした。
フランの拘束だけが解かれていた。
「フラン！」ボクは一目散に駆け寄り、フランの身体を揺さぶった。
んん、と云う声を漏らしたフランの胸は一定のリズムで上下していて、呼吸には何の問題も無いのだと分かる。
怪我もしていない。
ほっと安堵して力が抜けると、額に灯っていた死ぬ気の炎が消える。
何時の間にかおしゃぶりも袋に納まっていた。
途端、全身に激しい痛みと寒気が走った。
怪我に死ぬ気状態による筋肉痛、更に死ぬ気の炎の使い過ぎが組み合わさって、一気に疲れが押し寄せて来る。
雪の死ぬ気の炎の性質は、『凍結』だ。
｢トーマ、大丈夫！？｣
｢トーマさん、ご無事ですか！？｣
｢やったな、トーマ！｣
主君が、獄寺が、山本が、他の仲間達が駆け寄って来る。
ボクは彼らに小さく片手を上げるのが やっとだった。
視界が霞んで、目眩がして立っていられなくなる。
ぐらりと傾いたボクの身体は、地面に倒れる前に山本に支えられた。
身体が冷え切ったからか、山本の体温が心地良い。
急激に睡魔がやって来た。
｢おい！ トーマ、トーマ！？｣
｢眠いだけ……。ちょっとだけ、眠らせて……｣
顔を覗き込んで心配する山本に何とか微笑を浮かべ、ボクは重い瞼を閉じた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 186人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきな(プロフ) - これからも無理せずに頑張ってください！ (2019年7月2日 18時) (
レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
シロ(プロフ) - 続編おめでとうございます！いつも楽しみにしております！これからもどうぞ無理をしない程度に頑張って下さい。 (2019年4月27日 13時) (レス) id: 1e9e5f7638 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：レイチェル | 作成日時：2019年4月27日 10時
