歌い手とシェアハウスと秘密...3 (ページ8)

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第106話:絶望ページ8

愛希side
……あれ､なんでだろう｡寒くない｡冷たくも､ないや
ここは天国なのかなぁ?でも天使がいないから違うのかな?
それより一体どれくらいの時間がたったんだろう。
数分?それとも数時間?
ああ､心配してるだろうなぁ…本当､私ってば､ダメなんだから
お母さんも､お父さんも､美希も…あ､お父さんは死んだんだっけ…?あれ､美希って…?
他にも心配してくれてる人が居るはずなのに､思い出せない
思い出すのは､モザイクのかかった色んな顔､顔､顔｡
死ぬ前って､記憶無くなるのかなぁ…もう大好きなあの人の名前も思い出せない…や…
この時の私の思考は､今でも理解できない｡
その場所は､確かに1度お父さんによって､引きずり込まれたあの闇の中だったなのに。
そういえば今日､ゴーストルールの歌みたプレミア公開したっけ､とか｡冷蔵庫のご褒美プリンまだ食べてないな、とか｡
そんなくだらない事ばかり頭の中を過って｡
足を引っ張っているお父さんの存在さえ､気づかなかったんだ｡
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天月side
幸いなことに､美希の発作はすぐに治まった｡
けれど､今も尚歯を鳴らしながら何かに怯えるように震えている美希を見るのは辛かった｡
しかも､まだ目は虚ろで､目の前の僕らを認識していないらしく抜け殻のようだった｡
にしても､美希があんなにも取り乱すなんてなんだろう。
とてつもなく嫌な予感がする。
いや、それよりも先に美希のケアをしなくちゃ…
ひとまず僕は落ち着いてもらおうと､誰かが入れてきてくれたホットミルクを美希に手渡す｡
美)「……｡」
天)「美希…」
でも突然、飲まずに､じっとホットミルクに映る自分の顔を見ていた美希が、急に目に光が灯ったのを僕は確かに見た。
美)「ね､姉さん！」
その言葉を聞いた瞬間､僕は自分の予感が当たっていると悟った
"姉さん"
美希が愛希をそう呼ぶ時は､いつも愛希に何かあった時だけだから。
恐怖で筋肉が硬直して動けない僕を､美希は縋るような目でぽつりと呟いた｡
美)「天兄…姉さんが､姉さんが…帰ってきて､ないの｡」
その言葉は､僕を絶望に突き落とすのには充分だった｡
天)「え……」
あまりの絶望に力が抜けて､膝をつく。
そして､恐らく美希も浮かんだであろう最悪の可能性が僕の頭を掠めた。
もしかして､愛希はもう…
僕がその先を想像しかけた瞬間
?)「っ…このバカ！」
僕の頭の上で､誰かの声が聞こえた｡
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