歌い手とシェアハウスと秘密...3 (ページ6)

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第104話:努めて冷静に｡ページ6

ま)「あ､アイツって…」
ミ)「ナチュラルサイコパス野郎のことです｡」
そ)「天月なら､配信するって言って寝室にいるはずだけど…」
ミ)「ありがとうございます。」
見たところ､姉ちゃんの姿はない｡
再び､最悪のシナリオが僕の頭をよぎる｡
いや､まだ希望はある｡
天兄ならば､姉ちゃんから何かしらの連絡を受けているかもしれない｡
早く確かめなくちゃ｡
僕は､お礼を言うのもそこそこに天兄の寝室へ向かう｡
«ｺﾝｺﾝ»
ミ)「天兄居る?」
返事は､なしか…仕方ない
僕は､ドアノブに手をかけ､部屋に入ろうとした…が
«ガチャ､ガチャガチャ»
美)「ﾁｯ､開かない…」
恐らく凸を防ぐために､天兄が鍵をかけたんだろう
うちは､地声になったことにすら気づかないほどの､焦りと苛立ちを覚えた。
もし､最悪のシナリオ…姉ちゃんが発作で1人倒れ､苦しんでいる場合､時間が無いのは明白｡
うちは､再度ドアが開かないことを確認すると､少し離れて…ドアを蹴り飛ばした｡
«ドガッシャン!!»
木の割れる音が響いて､ドアが破損する｡
幸いなことに蝶番のひとつが外れたおかげで､難なく寝室に入ることが出来た｡
中に入り、様子を見たうちは…頭が真っ白になった｡
パソコンには､そらるさんの言う通り配信画面と､APEXの画面が映し出されていて､床に転がるヘッドフォンからは微かに知っている声のいくつかが聞こえてくる｡
そして当の天兄は…パソコンを前にして突っ伏して寝ていた｡
«ﾌﾞﾁｯ»
うちの何かが切れる音を､うちは確かに聞いた。
それからの行動は早かった｡
うちはツカツカとパソコンに歩み寄り、ヘッドフォンをつける｡
コメント欄は､ドアが破壊した時の音が聞こえていたのだろう。
中々に混乱していた｡
〈えっ?!なんの音??
〈大丈夫ですか?
〈地震とは違うような…何かありましたか?
ミ)「ｽｩ…あー､マイクテス､マイクテス｡聞こえてますか?」
〈えっ?!誰?
〈聞こえます､けど…この声は…
〈ミムさん??なんでここに…
«「へっ?!マイエンジェルの声?!」»
«「えっ?この声…なんでなん?!」»
ヘッドフォンから聞こえる2つの声…やっぱり､この方々か｡
ミ)「お久しぶりです。96猫さん､センラさん｡」
口調と声はできるだけ穏やかに､冷静に｡
でも心は全然穏やかでも冷静でもない
うちは､ミムの声のまま話を続ける
ミ)「実は､ちょっとした緊急事態でしてね…家主を借りたくて。よろしいですか?」
にじみ出る不安と恐怖に気づかないまま､うちは片足を振り上げた｡