百六十九歩目。 ページ20
―Aside―
［よぉ、Aちゃん。今日のはハイエンドっつーんだぜ］
『は？』
明らかにホークスではない声が聞こえて自分の声か疑うくらい低い声が出た。
相澤先生のド低音には勝てないけど。
なんて現実逃避をしてみるけども。確実に今の声は荼毘のものだった。
声が聞こえて即切れたからホークスがいるのは確かだ。
あの二人が、ヒーローとヴィランが、一緒にいる。
最初に浮かんだのは「ホークスがヴィラン連合のスパイ」になった可能性。
ホークスは公安の人間だ。危ない任務も、いわゆる"裏"の任務もやってきた。
インターンでのあの時までの過去は【視】てる。だから裏切りの線はない。
荼毘は知性のある脳無のことを「ハイエンド」と言った。
今までのモノとは違う。今回トップ２を狙ったのはそういう命令が下ってたからだ。
既にホークスがスパイとして入り込んでいたとするなら怪しんで殺そうとしたわけではない。
ホークスと戦わせることは一つの目的で、入試みたいなもんだと思う。
ハイエンド......試作品か？脳無のテストも兼ねてた？
USJの時よりも上のバケモノが造られた...？
脳無は大量に造れる。神野区で現れた数だけでも30体以上。
ホークスとエンデヴァーの二人掛かりでもあれだけの苦戦を強いられた。
あんなのが街中で暴れたらとんでもない被害が出る。
もし全国範囲に現れたら？各地で応戦できるほどのプロヒーローがいるのか？
今までのヴィランとの戦いなんて比じゃなくなる。
脳無一体に何人必要になるんだろう。人が増えればその分範囲も広がる。
地方からも集める必要があるかもしれない。
そうするとその地方のヒーローが減ってヴィランが動きやすくなる。市民を守れなくなる。
ヒーロー飽和社会で、ヒーローが足りなくなる。
人手不足を補う為にヒーロー科の生徒まで戦力に呼ばれるかもしれない。
『そしたら、もう、それは"戦争"と変わらないんじゃないかなぁ...』
「にゃあ？」
『何言ってんだって？んーとねぇ、ししゃもが心操くんと一緒に居れる世界を守らなきゃなぁって。私がんばるからね、応援しててね』
「ん"に"ゃ"あ"！！」
『いたっ！え、何今の声？初めて聞いたんだけど？？おこなの？？応援なんかしねぇって？？』
膝の上で猫パンチをしてくるししゃもをなだめながら時計を見れば午前5時を示してる。
あと2時間は寝れるな。今日も学校があるから睡眠はとっとかないと。
ホークスには後で話を聞こう。
▽
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作者名：えると。 | 作成日時：2023年3月30日 22時
