【マギ ジャーファル】毒使いの好物はみかん Second story

オウゴンカン ページ28

僕はさっきまでロハネ先生が腰掛けていた椅子に座り、ふぅ……と一息ついた。

コーヒーでも淹れようと思った途端、扉が叩かれた。

1人目の患者の様だ。

『どうぞ』

促すと、キィ〜〜と静かに開かれた。

『まずはジャーファルさんだね？ちょっと座って待ってて』

コクリと頷く彼を見て、コーヒーを淹れに席を立った。

ジャーファルさん、どうして何も喋らないんだろう？

『ジャーファルさんコーヒー、ミルクと砂糖は入れる派？』

「ブラックでお願いします」

苦笑して軽く手をあげるジャーファルさんに、首を傾げながらカップを机に２つ置いた。因みに僕は甘いのが好きなので角砂糖を２ついれミルクを入れてある。

『じゃあ、ちょっと触るから動かないでね〜』

ジャーファルさんの下瞼を少し捲り血管を見る。
次に口を開けてもらい、喉に損傷がないかを確かめる。

『いつも王サマ怒ってるから喉荒れてると思ったけど、大丈夫みたいだね？よし、じゃあ栄養剤出すから、3日間大人しくしててね』

「…………………」

さっきまで素直に頷いてくれてたのに、何故かこれだけは頷こうとしない。

『…………はぁ……分かったよ、でも今日は休んで』

「Aさん⁉いいのですか⁉」

余程仕事を取られるのが苦だったらしく、花が咲いた様な笑顔になるジャーファルさん。

こんな輝いた笑顔を見たら、何も言い返せない。

『ちゃんと定時で上がってね？それが例え途中でも……分かった？』

「は、はい」

『もし定時で上がってなかったら………』

黒い笑顔を向けると、ビクッと肩を跳ねさせた。やはり、徹夜する気満々の様だったらしい。

「じゃ、あ、ありがとうございました！」

そう言い逃げる様に医務室を出て行った。

『まさかここまで仕事人間だったとは……』

多分今から仕事するんだろうなぁ、と思いながらため息を吐いた。

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