【マギ ジャーファル】毒使いの好物はみかん

レモン ページ13

『へ……？』

涙……？

ガチャ、ガシャカチャン。

『！！？？な、何を⁉』

「いえ、貴女が起きたら解錠していいと言われているので……痛みますか？」

ば、馬鹿なのか…？いくら武器を持ってないからって、鍵を外すなんて……

『意味解んない……』

何で僕に優しく笑いかけ、接する事が出来る……？

『解んないよ……』

自由になった手で涙を拭いながらそう繰り返す。
あれ？止まらない……涙が、止まらない…何で…？

「意味……ですか？そうですね〜んーむ」

『僕は、暗殺者なんだよ？馬鹿なの？それともナメてるの？武器が無いからって、戦えないと思っ……なっ⁉』

力の入らない足で無理やり立ち睨んでいると、何かに身体が包まれた。

「落ち着いて下さい。何も、しませんから」

その正体はすぐに理解出来た。

『い、いやだ……は、なして……』

先程の様に叫ぶ気力は残っておらず、ぽそぽそと拒絶するが、男は抱き締める力を強めるばかり

『離せよ、離してよ……僕に、優しくしな…』

「離しません……！」

『⁉』

「今まで辛い想いをしたでしょう？気付かなくてっ、すみません」

何で……？

昨日会って、今日、しかもこんな状況で初めて言葉を交わしたのに…無関係なのに……

『何で……貴方が泣くの？』

男は僕の肩に顔を付けて、しゃくり上げながらすみません。という。
いつの間にか、この男が触れている恐怖心が消えていた。

「とても、他人事とは思えないですし、貴女は本当は優しいから……」

本当……何だこの”人”は……
僕はトンッ、と軽く押して身体を離し、目線を斜め下に下げる。

『僕が優しい？あんたの目は節穴か？僕は暗殺者だ！自分の父親も殺した！あんたの主人の首を狙った！他にもっ……沢山、この手で人を………』

「もう、強がりはやめたらどうですか？」

『っ⁉うぅ……、っふぅっ……ずっ』

身体の力が抜けた。






そんな優しい顔されたら、優しくされたら

「よしよし、もう 怖い想いはさせませんから」

僕は”ジャーファルさん”の腕の中で子供の様に声をあげて泣いた。

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