【マギ ジャーファル】毒使いの好物はみかん

ピーチ ページ11

「まだ身体は痛みますか？」

バッ！頭を上げると格子の向こうから聞き覚えのある男の声が聞こえた。
暗くて、相手の表情は読めないが、声色はとても優しく、何故か胸が暖かくなるようだ。

ガチャ……

『何を……して、いるの？』

ボーとしていたら、その人が鍵を開け入って来て、僕の前にしゃがんで顔を覗いた。
ふと、その人の手が頬に伸びた。

『ひっ！い、いや、来ないで……いっ』

首を捻り、抵抗するが、上手く避けられずにその手は僕の頬に触れた。

「そんなに怯えなくても、貴女に拷問なんてしませんよ？それより…」

『……せ、………な…で』

「はい？」

男の手が、僕に触れた……
何が拷問はしないだ……充分だよ。
”恐怖”
ただそれだけの感情が、僕を埋め尽くす。

『触るな！！！！』

「⁉す、すみません」

僕が怒鳴ると、慌てて離れて謝罪をする。

『どんな拷問も受ける……だから、僕に触らないで……おねがぃ…』

首の力を抜きダラんとする。まだ止まっていない涙が膝の上に染みを作る。
敵にこんな醜態晒すなんて、もう、僕には主の所に帰る資格が……

「それは出来ません」

『⁉』

諦めを決めていたら予想外の言葉が聞こえ再び顔を上げると、今度はバッチリ目があった。
暗い中でもはっきり解るその顔は……

『あ、んた、』

昨日の……って言おうとしたけど…向こうが覚えていようがいまいが僕にはどうでも……

「昨日は、ありがとうございました」

『へ……？』

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