第八十三話 ページ8
鬼灯side
「以前、東の針山に良く向かっていると、義父から電話があった事があります」
「解りました」
地獄の凸凹した道を2人で駆けていく。
彼女の額や顔にはジワリと汗が付いている。
「大丈夫ですか？貴女は此処で待っていてもいいんですよ？」
一旦止まろうと思い、スピードを緩めようとしたら、腕がグンッと引張られ、結果元の速さに戻ってしまった。
どうした事かと、彼女の顔を横からチラッと見る。
「ッ⁉」
彼女の目は真っ直ぐ目の前の道を見ていて、とても諦めてる目付きではなかった。
「麦御様は私の恩人なんです！易々と諦めてやるもんですか‼」
「⁉ありがとうございます」
私もまた、目の前の道を見て走った。
「「麦！/麦御様！/待っていて下さい」」
ピピピッピピピッピピピッ
暫く走ると、私の携帯が鳴った。
画面を見るとX白豚Xの文字。
「ピッ)はいっ！な、にか、ありました？」
走りながらだと話し辛いが、止まっている暇など持ち合わせていない為、そのまま話す。
「麦ちゃんの腹に入れられてた奴の正体が解った」
その声は愛菜さんの耳にも届いたらしく、目を見開いて少し、いや、かなり嬉しそうな表情になった。
でも、引っかかる。
「入れられてたとはどういう事ですか？」
「よく聴け」
電話越しでも、彼奴の緊張感が伝わって真剣に耳を澄ませる。
「麦ちゃんから出て来たのは、讙という妖怪で、薬の中に閉じ込められ、そのまま飲まされたんだよ」
「薬の中に妖怪を閉じ込める⁉」
「そんな事可能なんですか？」
「これは僕の憶測だけど、あれは漢方の知識とは似て非なるもの。本来なら体内の毒塊何かを食べる特殊な生物を入れる為に使われるものを改良されたものなんだと思う」
「そうですか、それで、その妖怪は今？」
「今日から僕のペットだよ」
「ペッ⁉……えぇ⁉」
走りながら器用に表情を変えてツッコんで来る彼女は周りからすれば凄いんでしょうね。
「僕も今からそっちに向かう。何処にいる？」
「プチっ)貴方の役目は麦御様の様子を見る事では？」
麦の事を思い、白澤さんにキレ始める愛菜さんに気まずそうに、そうだけど……と答える豚。
愛菜さんは私から携帯を取ると、
「大丈夫です！私達だけでやれます！白澤様は麦御様をお願いします‼」
そういうと彼女は終了ボタンを押し、私に返した。
「たくっ……頑張れよ」
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作者名：sunijy x他1人 | 作成日時：2016年12月7日 18時
