第百十話 麦御side ページ36
「朧の旦那……なんだかルビー色に光る湖(血の池)が見たくなっちまったよ……」
「何度きいてもその話は泣けるぜえ、いいぜ行こう」
「いや、それよりさっさと烏天狗警察まで行って下さいよ」
『何二人してメーターあげようとしてるんですか……血の池は今度行って下さい』
「いいじゃないの……この於岩さんとドライブしようよ兄さん姉さん」
「しまいにゃ訴えるぞ有限会社朧車」
「どうしたよ於岩。もしかして夫にまだ未練があるのか？」
「バガだねないよ………ないよ」
『……於岩さん……』
於岩さん……本当は旦那さんの事……
「麦、何情に流されてるんでs……」
ガッタン！！！！キッ
「おわっ！」
『きゃっ⁉』
急ブレーキがかかって力を抜いていた私の体は宙に浮いた。
鬼さ「麦甘えん坊ですか？こんな所で大胆ですね？」
『え？……わぁっ⁉ご、ゴメン！決してわざとじゃないからね⁉』
床に落ちると思い目をぎゅっと瞑ったのが誤りだった。まさか鬼灯に抱きついてしまうとは……
こんな所で恥ずかしい……
顔に熱を集める私を置いて鬼灯は簾を少し開け、タクシーに状況確認をとる。
「どうしたんですか？」
「いや、あの、あれ俺の友人なんすけど……なんか飛び方が……」
「ん？烏天狗警察じゃないですか？」
「これは鬼灯様！」
「何かあったんですか？」
「先程、指名手配の亡者を見たと通報がありまして、どうもあのタクシーの中ではないかと……」
「ええっ⁉あいつ大丈夫なんですかっ⁉」
『指名手配？』
「これは麦御様！はい民谷伊右衛門という男なのですが……」
「麦、あまり身を乗り出すと危ないですよ」
『だってよく聞こえな……』
「い、伊右衛門様‼？」
私を中に座り直させてると於岩さんが急に叫びだした。
「こうしちゃおれないよ‼朧の旦那！追跡してくんなぁ‼」
「いや、あの堂々と勝手なマネされると困ります」
『於岩さんちょっと落ち着い……』
「オイッうるせえぞ警察‼」
「俺はネコバスに乗るのが夢だったんだ！！！！」
後ろでガヤガヤしていたら民谷さんが前のタクシーから顔を出した。
「あいつ意外とアホだぞ！」
「残念なイケメンだ！」
烏天狗警察とシロさんのツッコミに気を取られていたら、押さえていた於岩さんがタクシーを飛び出した。
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作者名：sunijy x他1人 | 作成日時：2016年12月7日 18時
