第百三話 ページ29
『ありがとう？急にどうしました？』
置いて行かれた事に凹んでいたら蓬さんが頭をバッと下げた。
『蓬さん？』
上げられた顔を見ると、目には涙が溜まっていた。
「鬼灯を好きになってくれて。あいつ無愛想だし言葉も厳しいし、ワーカホリックだから……あいつに好意を寄せる女は内面を見る奴なんていなかった……でも、あんたは違う。ちゃんと鬼灯を見てくれた」
私は鬼卒導師のマンガを棚に仕舞い、向かいに座る。
『そう、思いますか？』
正直自分がそこまで全うなのかは理解しかねる。確認と疑問を投げる。
「思うよ、だって現にあんたは鬼灯を頼りにして、大事にしている。あいつも中々話さないが、あんたの自慢ばっかりだよ。今日だってあんたが来るまで自慢ばっかりだったんだから」
何だか照れくさくて顔が熱くなる。
『鬼灯は、初めて出来た私の大事な方なんです。私が凹んでいる時、困った時、嬉しい時、悲しい時にいつもあの人はいつも側にいてくれた。私はこういう性格だからあまり人付き合いは上手い方ではなかったので、導いてくれた鬼灯が大好きなんです』
『それだけじゃないです。風邪引いちゃう所とか、動物園によく視察に行く所とか可愛い所とかも全てが大好きなんです』
依存してますかね？と苦笑いを向ける。
「上手く言えないけど、あいつにはそれくらいが丁度いい気もする。だから、無理は言わない。ただ、側にいて、あいつに誰かに愛されるあたたかさを感じさせて欲しい。鬼灯は誰よりもそれに疎いから………」
『何言ってるんですか？
そんなの、愛し続けるに決まっているでしょう？』
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作者名：sunijy x他1人 | 作成日時：2016年12月7日 18時
