第七十八話 愛菜の過去 一部足しました。by作者 ページ3
愛菜side
ジンジン痛む体を気にせず立ち上がり、言葉を紡ぐ。
ー遡る事数年前ー
私が家から逃げた日のこと
「お姉ちゃん！！お姉ちゃん！！嫌、行かないでよ！優香と約束したでしょ！」
服にしがみつく妹を撫でる。
「ごめんね、優香…約束は、もう守れないの。お家の事は、優香に任せるからね」
「嫌、嫌嫌！お姉ちゃん！ずっと一緒にいるって……(父「優香！いい加減にしろ！愛菜はお前に構ってる暇はないんだ！すがってる暇があるなら漢字の100個は覚えろ！お前また成績が下がったらしいな！姉を見習え！」パパ……」
「愛菜！早く行きなさい！後、本当に跡取りにはならないんだな？」
「うん。私は私の出来る事を見付ける。漢方はからきしだったからね、優香の方が跡取りは向いてるし、院の為になるよ。大体私はこの家のものじゃないし」
「解った。覚悟は固いようだな、愛菜、不安になったらいつでも帰ってこい」
「愛ちゃん！跡取りじゃなくても、ここは貴女の家なんだからね？」
「父さん母さん、ありがとう…行ってきます」
「お姉ちゃん！お姉ちゃん！お姉ちゃーーん！」
「優香！早く部屋に戻らんか！」
「優香、ごめんね」
父さんは私にはさっきのように優しいが、妹には厳しい。勿論私だけ甘やかされた訳じゃない。
やらかした時はこっぴどく叱られた。
泣きながら父に引っ張られて行く妹に謝り、足を進めた。
それからしばらく経ち帰ってきた時。
「父さん母さん！聴いて下さい！」
バーン！と戸を開けると、2人は顔を青くして俯いていた。
「あぁ愛菜。帰ってきたか……おかえり」
「う、うん只今、2人共顔色が悪いよ？大丈夫？」
母さんの肩に手を置くと、小さく悲鳴をあげ体が跳ねた。
「母さん？」
「あ、愛ちゃん？」
今私の存在に気付いたようだ。
「あ、愛ちゃんだわ！愛ちゃん！もう、もう貴方だけが頼りよ」
「うわぁっ！」
いきなり母さんが抱き付いてきた。様子を伺うと、体を震わせ涙を流していた。まるで、何かに怯えるみたいに。
私は母さんの背をポンポンしながら父さんを見る。すると父さんも涙を流していた。ソファーに座って肘を額に当てながら。
「一体……私がいない間に何が……」
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作者名：sunijy x他1人 | 作成日時：2016年12月7日 18時
