【STORY.38†[EPISODE.SEVEN＊サッカー]】 ページ18
45歳。ソプラノ歌手。美琴と琴音の母。旧姓はAと同じく「青空」。
46歳。ヴァイオリニスト。美琴と琴音の父。
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少しずつ色んなことを覚えていって、生活に慣れてきた頃。
「…うーん」
「？」
お兄様が小学六年生、私が小学二年生の頃。ある中学校に入学するかで悩んでいた。
「…雷門って、確かサッカーで有名な学校よね」
「ん？あ、うん…」
「お兄様サッカー得意でしょう？それに、入りたいって言ってたでしょ？」
「…そうなんだけど…アイツと一緒に行くんだって約束したけど…」
「…お兄様の親友がどんな人なのか分からないけど…でも、お兄様が行くのを諦めたら…その人は悲しむかもしれないでしょう？」
「…」
「…一度、相談してみたらどう？」
「…そうしてみる。ありがとう、琴音」
結局、お兄様は雷門に入学した。何でも「アイツの分までサッカーをやるだけだ」って。
お兄様が雷門に入学して、なんだか楽しそうだった。
それとは対照的に…私は辛かった。優れすぎているというのは、時に嫉妬だけでなく恐怖を生む。今の私はそれを理解している…だけど、理解した時には遅かった。
それでも…サッカーだけは、皆と同じように楽しめた。この頃の私は、サッカークラブに入っていた。そこでもまた…ある意味「調子に乗っていた」というのかしら。
チームメイト達はよく私に頼ってきていて、私自身もそれが嬉しかった。気付けば私は「フィールドの歌姫」と呼ばれるようになっていた。その理由は…。
「…私が、日本で初めての化身使い？」
ある日、大人達にそう教えられた。実感はなかったけれど…でも、そのおかげなのか皆もっと親しく接してくれた。
この頃のサッカーは、「社会的地位を確保する手段」と化していた。…今思えば、普通じゃない私がチームメイトに受け入れられてたのは…自分の将来が確保されるだろうという願望があったからだと思う。
それが分かったのは…あの、クラブチームでの最後の試合後。
「アンタのせいで負けたじゃない！」
「役立たずが！」
「お前なんかただの『化け物』だろ！」
試合の日、私は熱を出して欠席した。その翌日…皆のところに前日のことを謝ろうとして行ってみたら…突然、理不尽な言葉を言われた。
この人達も結局…そういう風にサッカーをやってたのか、そんな目で私を見てたのか。
私は…何かが壊れたのを感じた。
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作者名：睦月火蓮 | 作成日時：2015年4月19日 23時
