CROWN No.87 ページ37
‥
『感じるままに』
HIROさんはそれだけ言うと、後は他愛のない話だけしかしなかった。
亜嵐も喋り出して、まるで男子高生の放課後のような、ありふれた世間話を聞いているよう。
監獄の話はおろか、もはやこの "BIG CITY RODEO" すら話題に上がらない。
『最近あのメーカーで新しい菓子が新発売した』とか、『この間あのゆるキャラがブームで』とか、『あのタレントがまさかの結婚』とか、本当にどうでもいい話ばかり。
私は、ここにいる意味があるのだろうか。
刑務所の中でも世情を知る手段はあるから、話題についていけなくはない。
HIRO「……それで」
また、唐突だ。
緊張感が緩んだ途端、視線がこちらを向く。
虚を突かれ、戸惑う。
ぐりん、とHIROさんに眼球を向けると、HIROさんはまた笑った。
HIRO「そんな驚かなくても」
A「……さっきまで、他愛ない話をされていたので。
また、私に話題を振られるとは思いませんでした」
HIRO「そう? 全然そんなことないよ」
どうやら、話題に刑務所や "BIG CITY RODEO" のことが上がらなかったのは、偶然らしい。
きょとんとした顔のふたり。
何だか勘ぐってしまって、自分が恥ずかしい。
HIRO「Aちゃんは、 "CROWN" を辞めたい。
そう言っていたと、聞いているけど」
A「……」
HIRO「今も、その気持ちは変わらない?」
『まだ始まって4日だけどね』と言うHIROさん。
たかが4日、されど4日。
刑務所に収監されてすぐ始まった、あまりにも濃い生活。
溜め息が出るような、囚人のつまらないいじめにいちいち腹を立てるよりは、我儘で好き勝手していて、それでいてどこか黒く澄んだ "GENERATIONS" の "CROWN" となって、毎夜開かれる "BIG CITY RODEO" につき合ってやることのほうがマシ。
……そう、マシだ、と考えていた。
亜嵐「……A?」
A「……」
私は、言葉を出さず。
視線を、HIROさんに向ける。
ゆっくり顔を上げて視線を絡ませれば、『ん?』と言う感じでHIROさんは首を傾げる。
視線を移動させれば、少し困ったような、端下がりの眉を動かして、亜嵐が『どっち?』と言いたげな表情。
……私の気持ちは、今。
──私は……
‥
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な - 昨日見つけてここまですぐ読んでしまいました!凄くみんなの過去が気になって惹き込まれます!!!これからも応援しています! オチは裕太くんか隼くん希望です! (2018年3月5日 12時) (レス) id: f0e5b106b0 (このIDを非表示/違反報告)
ぐっちー(プロフ) - いつも見ています!主人公の過去が気になって、いつもドキドキしながら見てます!これからも頑張ってください!応援してます! (2018年1月25日 19時) (レス) id: 900406c4cd (このIDを非表示/違反報告)
星華(プロフ) - 初めまして!楽しく読ませていただいています。オチは誰でもいい気がしてきました笑頑張ってください! (2018年1月25日 18時) (レス) id: f0eebf7f9c (このIDを非表示/違反報告)
和佳奈(プロフ) - これからどんな風になるのかどんな過去があるのかすごい気になります!!オチは龍友がいいです!これからも頑張ってください! (2018年1月25日 2時) (レス) id: 74371510d3 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます!前にオチは亜嵐くんがいいって言ったんですけど、読めば読むほどどのメンバーのオチも気になって仕方がないです笑 でも1人にしぼるなら亜嵐くんで! 大変だと思いますが、頑張ってください!応援してます!! (2018年1月23日 11時) (レス) id: fea3c16bd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Kyoh. | 作成日時:2017年11月12日 20時