【BIG CITY RODEO / GENERATIONS】 CROWN 2

CROWN No.86 ページ36

‥




亜嵐「で、今日ちょっと来てもらったってわけで」


A「……要するに、顔合わせ」


HIRO「ああ、君に興味もあったしね。
　何だかんだ、最近刑務所に顔出せてなかったし」









本当は監獄長または刑務所長、と呼ぶところなんだろうけど、名称として『刑務所』が使われていないことと本人の希望もあって、気まずいながらもHIROさんと呼ばせていただくことにする。



『今まで、顔見に来ようと思ってたら既に終わってたり見知った顔だったりしたからさ』とHIROさんは笑った。
何だか、嗤っているようにも見えた。
でも微笑っていたから、どちらなのかは正直なところ判らない。
『今度は昼に行くことにするよ』なんて言うから、『午後でお願いします』と念押ししておいた。
やっぱり、帰ったらまずは寝たい。









HIRO「ふむ、ここでは "CROWN" と呼ぶのが妥当か。
　それとも、 "A" と呼ぶのが妥当かな」


A「……どちらでも」


亜嵐「HIROさんなんで、どっちでもいいと思いますよ」









やはり、ここでは番号は出さない。
"監獄 TRIBE" とは、切り離された世界だから。



『じゃあ、Aちゃんで』と笑うHIROさん。
『はい』と言うと、勘違いされたのか『呼んだわけじゃないよ』と言われた。
その顔は、相変わらず笑顔が浮かんでいる。









HIRO「……何か、訊きたいことでも？」


A「……」









ふと、真面目な顔になるHIROさん。
相変わらず微笑んでいるけど、さっきまでの柔らかい雰囲気は消えた。
肘を組んだ体勢も笑顔も変わらないけど、たしかに真剣なモードになっている……気がする。



この部屋は真っ黒で、中央にネオンで光る電灯が吊り下げられているだけ。
窓はない。
あるのは、ロココ調の絢爛なテーブルと、それを挟んで向かい合うソファー、そして棚。
クラシック(現代的じゃないもの)にこだわっているのだろうか。



じっと顔を見つめる私に、HIROさんは問う。
訊きたいことなど、山ほどある。
だけど、訊いてもいいのだろうかと葛藤が渦巻く。









HIRO「今はまだ、何も訊かないで」


A「え？」


HIRO「今はまだ、ただ身を委ねて、
　……感じるだけでいい」


A「……？」









初めて聞く言葉のはずなのに。
私はたしかに、この言葉を聞いた。



HIROさんはそれだけ言って、私の頭を撫でた。
何だか子供扱いされた気分だ。
それに、今ので訊きたいことが全部消えてしまった。




‥

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