それでも俺は君を愛してる (ページ19)

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第10話ページ19

エレベーターの扉が開けば、すぐそこにレストランがあって、病棟と比べてガヤガヤと賑わっていた。

「わぁ。凄い。人たくさん」

「ここの病院でかいもんなー。どれも美味そう」

人の多さに驚きながら、レストランの中に入れば席に座ってメニューを眺める。
どれにしよう、とメニューを必死に見ているAを見て、よくデートしていた時の彼女の姿と重なる。

「カルボナーラとかは？どう？」

「えっ……、また私の好きなもの読んだんですか？やっぱりエスパー菊池さん？」

Aは真剣な顔をしながら、俺の顔をまじまじと見つめて言うもんだから、思わず笑ってしまう。
俺が笑うのを見たAは「もう」と膨れてしまった。

「あはは、ごめんって。Aちゃんがメニュー見てる目線見てそうかな～って思っただけだよ」

なんて、そんなのは嘘。
Aがカルボナーラが好きだということも、勿論長い付き合いで知っていた事。

「…………懐かしいなぁ」

「……え、」

いつの間にか、俺の方から窓の外へ視線を移していたAが、ポツリと呟いて、思わず耳を疑った。
驚いて彼女を見れば、恐らく無意識で呟いていたのであろう、Aはキョトンとして小首を傾げている。

「あれ、私何か言ってました？」

「……あぁ、ううん。頼んじゃおっか。俺まじ腹減りすぎて死にそう」

「そうですね。私も腹ペコです」

ニコッと笑うAを見て、もしかしたらAは、本当に少しずつ思い出してくれるかもしれない、なんて淡い期待を抱きながら、レストランの店員を呼ぶために視線をAから店員の方へと移した。

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