「表裏」 ページ24
お風呂から上がって部屋に行くと、布団だの何だのが準備されてて。
「何かあったらまたお申し付けください」と言うお姉さん達の扱い方が未だにわかんなくて「どうも」って答えるしかなかった。
寝れる訳もなく掛布団の上から横になる。
今何時なのか気になって、仰向けの体制のまま手を伸ばしてスマホを探った。
翳してみると、「9:33」の数字が浮き上がってびびった。
まだ10時にもなってないのかよ、いつもならまだ遊び歩いてんのに。
思い返してみれば、今日全然スマホ触ってなかったな。
また私あてのリプだのDMだのの通知を見たくなかったから、ホーム画面から開くことのないまま電源を切った。
……みんな「スマホ無いと死ぬ」って言うし、私も実際そう思うけど。
意外とスマホ無くても生きれるもんなんだよな。
多分、これが無いと死ぬのは、私じゃなくて、“社会的な”私だし。
インスタだのツイッターだのが無い時代に生まれたかったわ、とため息をついてスマホをそこらに放った。
「失礼します」
足音も無く、急にあの水色の声が響くから、一瞬息が止まった。
「……どうぞ」
静かな音をたてて襖が開いた。
黒子もお風呂上がりらしく、羨ましいくらいに白い顔が少しだけ上気して赤くなってた。
身長が低い癖に妙に大人びているから、中学生には見えないような色気が漂ってて、元からあった中性的な雰囲気が強まってる。
「お湯加減はいかがでしたか」
そのくせ旅館の女将みたいなこと言うから、そのチグハグさにちょっと笑って「ウケる」と呟いたけど、黒子は気にも留めてなさそうだった。
「めっちゃ良かった、お風呂もご飯も。ありがと」
「なら良かったです」と黒子が平坦に言って障子を閉めようとするのを見て、頭に疑問符浮かびまくる。
え、何で帰ろうとしてんのお前。
私こいつに買われたんだよね?
考える間もなく、襖が閉まりきるのを手で阻む。
「……どうかしましたか?」
「……しないの」
こういうことを恥ずかしげもなく言える自分がどうしようもなく嫌いだ。
黒子はその言葉になんの動揺も見せず、何を考えてるのか全くわかんない目で見つめてくる。
流石の私でもいたたまれなくなってきた。
早くなんか言えよ……
「……何をですか」
「は?」
首を傾げる黒子に、間抜けな声が出た。
何を言ってんのこいつ。
「暇なら花札でもします?ボクわりと強いですよ」
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水団子(プロフ) - 歌柚さん» 話の展開を褒めて頂き光栄です、、!!!拙い文に亀更新で申しわけありませんが、楽しんで頂けると嬉しいです!コメントありがとうございました! (2021年8月31日 3時) (レス) id: 4f5e2162c5 (このIDを非表示/違反報告)
水団子(プロフ) - 光華さん» めちゃくちゃ嬉しいです、、恐ろしい程更新が遅いですが、最後までお付き合い頂ければ幸いです。コメントありがとうございました! (2021年8月31日 3時) (レス) id: 4f5e2162c5 (このIDを非表示/違反報告)
歌柚 - コメント失礼します。ストーリや話の展開が面白くて楽しく見させてもらってます!ストーリ更新楽しみに待ってます!! (2021年7月13日 21時) (レス) id: f33fb75788 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 好きです!更新応援してます! (2021年5月16日 10時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
水団子(プロフ) - よもぎお餅さん» 黒子くんのお家に行こうと尾行したら見失った、というエピソードが好きでそこから色々と捏造を重ねたらこんな黒子くんが出来上がりました(^-^)主人公らしからぬミステリアスさが魅力だと思っています!コメントありがとうございました!! (2019年6月19日 20時) (レス) id: f26d4bb807 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水団子 | 作成日時:2016年9月16日 0時