398話 ページ39
ギターを片付け、熱い紅茶にふたくちだけ口をつけて
「それでそれで?バンドの方は?」と話を急かしてくるAがかわいい。
ゆ「高2になる前の春休みでさ、急にしんさんから連絡来たの」
あの人のおかげで自分が音研にいるのだとわかっていても
何か、近寄りがたいというか、つかめないというか
ともかく、苦手意識を持っていた先輩からの、突然の呼び出し。
『バンドのボーカルやらないかって?』
ゆ「ううん。この日のこの時間にこのカフェ来て、って」
へぇと彼女が声をあげる間に、僕は紅茶をひと口。
ゆ「んで行ってみたらさ、知らない人たち2人が待ってて、声かけられたの。
“宮崎くんですか?”って。」
『“はぁ…”とか言ったんでしょ』
ゆ「うん」
『やっぱり』
そうだと思った
眉を少し下げ、首をかしげて笑う。
ゆ「ひとつ上の先輩たちでさ。ギターの知さんとベースのフジムラさん。
ボーカル探してて、できればギターも弾ける人で、って。
しんさんがね、たまたま話きいて僕のこと言ったらしいんだ。
軽音部の、ほら、さっき話した人ね、あの先輩の折り紙つきって言ったら
知さんたちがしんさんに“紹介してくれ”って、とんとん話が進んだんだってさ」
なんというか、妙に顔のきく人なんだな、しんさんっていうのは。
理由ははっきり言えないけれど、でも、感覚的にはわかる
__ただ単に見てくれが良いだけの人じゃない
優しいし、気が利くのに、一線を越えるようなことは絶対にない
それがなんというか、とても過ごしやすくてちょうどいい。
だからみんな近寄ってゆくのだ
(…まぁでも、やっぱり慣れないけど)
どう接するのがいいのか
つっけんどんでもいけない。馴れ馴れしすぎてもいけない。
解っているのは、
(嫌われてはいない、…はず)
『ゆりんちゃん?』
ゆ「…あ、ごめん。どこまでしゃべったっけ」
『しんさんの紹介で、バンドの人たちとご対面するぞーってとこまで』
ゆ「はいはい。
…誰がゆりんちゃんですか」
『ありゃばれた』
――しんさんがそうやって呼ぶの、かわいいな〜って思ってさぁ
――かわいくない、禁止です、次呼んだら怒るから
お茶をもう一口飲んで、気を取り直す。
ゆ「話を聞いてみたらさ、結構本格的にやるみたいでね」
曲をつくって、次の文化祭ではオリジナルをやりたいこと。
そこでうまくいったら、今度はもっと発表の機会を増やしていきたいこと。
ゆ「さすがにビビったよね、あんまり本気だから」
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アゲハ @ 元HIKARU(プロフ) - 続編おめでとうございます!!!体育祭、楽しみです!!これからも応援しています。いつも素敵なお話をありがとうございます(*^^*) (2017年4月14日 17時) (レス) id: cd624d2203 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:モノクロメロディ―。@ついった | 作成日時:2017年4月13日 22時