【歌い手】＿きみのいろ＿#4【ROC】

150話 ページ21

パンを買って部室に行ってドアを開いた途端、ちゃんいぶがAに飛びついてパンが落ちた。

彼女の首に思いっきり顔をうずめている上、
まだ例の恒例行事(前髪結びの式)が行われてないので顔はほとんど見えないけど、絶対満面の笑みだろう。

(Aの首筋ってどんな匂いすんのかな)

なんて変態じみたこと考えながら、落ちたパンを全部拾い上げて、そばの机に置いた。
そこにイスを３つ引っ張ってきてこちら側に２つ、向こうに１つ置く。
僕自身は２つの方に座ってから彼女の買ったパンを隣に置いた。


『お、お〜３号くんか。元気?』
Ｅ「すき」
『そっか元気そうだね?ありがと』

腕の抱擁を緩めて、ずいぶんな至近距離で顔を合わせながら「前髪お願いしまする」だってさ。

僕はそれを、焼きそばパンにかぶりつきながら眺めている。


れ「いぶ!!イチャイチャしてっと姉ちゃんの手作り弁当食っちまうぞ!!」

Ｅ「あちゃ〜それはダメーっ」

ちゃんくらが微妙な顔で笑う。嫉妬４、安心６くらいの笑顔。
れをるがおっかない顔で睨む。怒りMAX。ひぇぇ…

――なんて
こんな余裕こいてられるのは、たぶんさっき握った指先のおかげだと思う

そっぽむいた夏代を横目に、僕のギター弾きすぎで固くなった指先を伸ばして
同じように最近固くなってきた彼女の指先に絡めたら、すごくほっとした。

(この指のマメってけけさんのギターでできてるのか)とかバカなこと考えて指先もんでたら
不思議そうに握り返されて、それからAも夏代がこっち見てないのを確認してから、


『はいできた。お姉さんのお弁当食べてきなね』


…にひひ

って声の聞こえそうな照れ笑いを、僕だけに向けた。僕だけに。
それだけでもうまるで彼氏になったみたいな気分になるから、安上がりな恋心だ。


『あ、パンありがとー!!
　えっと私ここでいいのかな?』

ゆ「うんおいで」


(しめしめ。)

僕も頭使えばこれくらいはできるんだよー

食い終わりそうなやきそばパンを口から離して、隣のメロンパンを食べようとしたAに口を開けて向ける。

『はいはい』

くすくす笑いながら最初の１口をこっちに向ける。あー…タイミング間違えたわ

ゆ「いくよ?」
『ん?いいよ別に、気にしてないし』
ゆ「…あっそ」

でっかく口を開けてかぶりついてもっていく。
目の前で“気にしてないし”とか、ほんと、無自覚にしたってタチが悪すぎるよね


『おいしいですか?』

顔が近い

ゆ「ん。」



(ほっぺついてる)

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