【歌い手】＿きみのいろ＿#4【ROC】

147話 ページ18

孝明くんがトイレに行ってくるというので、待ってると答えた。

夏「あ、ぜってぇ脱ぐなよセーター」

振り向きざまにポッケから手を出して指をさしながら言われる。
実はちょっとそんなことを考えていたから思わず「あ、は、はい」なんて詰まった。


(…ちぇ)


暑いなぁ。太陽元気すぎでしょ。

口をとんがらせて彼を見送る。
んでもって出て行ったのを確認して、ぷはっとサマーセーターを脱いだ。


「あれ〜、ダメって怒られてませんでしたっけ?」


クスクスおかしそうに笑って言うのは
その笑顔で女子を悩殺しまくってる学校の王子様だった。

『りぶくん?い、いいのだよ』
り「夏代が心配して言ってんのに?」
『そもそも孝明くんにそんなに言われる筋合いないんだけどね』

り「孝明くん?」

りぶくんが目を見開く。
私が首をかしげると、彼がニンマリ笑った。

り「なぁんだ、やっぱり付き合ってるんじゃない」

今度は私が目を見開く。ついでに口も開く。

付き合ってる?私と、あの金髪きのこが?

(いや、)

『ないないないない』

へらへら、思わず笑ってしまった。そうか、下の名前なんかで呼ぶとそんな誤解が生まれるのか。
だから「２人だけの時にしてね」って言われたのか。納得!!

り「え〜そんな笑う?」
『いやだって、へへ、ないないない、ないわぁ、あははー』

不思議そうにりぶくんが首を傾げた。

別に彼が男性としてどうのこうの思ってるんじゃない
単に、夏代くんが彼氏だったら、なんて考えたことがないんだ

そうだなぁ、彼氏と言えば


――――彼氏っていう選択肢は?


昨日の帰りに彼にそんなことを訊かれたのを思い出した。
その時はいぶくんのことを、だったけれど

(高校生って恋愛に忙しいのかな)


『そういうりぶくんどうなの?まじ娘さんとさぁ?』

からかい返すようにひじで小突いた。
からかうつもりだったのだ

なのに、ね。



り「あ、そう、そだ、あったんだよ、聞いてくれるっ…!?」


顔を真っ赤にして握ったこぶしを上下にぶんぶん振りながら言う。
戸惑いながら返事をすると、数日前の図書室でのやり取りがあったことを話してくれた。

『へー!!!やったじゃん、脈アリじゃん!!!!』
り「だよね!?これはもしやのもしやだよね!!」

『いいなぁ』

ふと口からこぼれた。喜びでいっぱいのりぶくんは気づかない。


高校生は恋愛に忙しいんじゃなくて、恋愛が感情にたくさん響く時期なのかもしれない

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