【歌い手】＿きみのいろ＿#4【ROC】

145話 ページ16

ひとり、彼氏のことをぽーっと考え出した花をチラ見する。
小さい頃からかわいいのは確かだったが、まさかここまで上玉に育つとは

(だからって欲しいとは思わないけどね)

花は初めから恋愛対象外なのだ。物心ついた時から「ぽこたぽこた」のこいつは。

ケータイが振動したので開いてぽちぽち返信していると
いつの間にか現実に戻ってきたんだろう、花が問題集をしまいながら言った。

花「あなたはAちゃんのこと好きにはならないのね」
Ｓ「どうしてだと思う?」
花「さぁ…そうね、けけが好きになっちゃったからかしら」
Ｓ「そんなお人よしに見える?僕」

見えないわねー、あきれたように苦笑して言った。


花「相変わらず肩に力入った生き方してる」


Ｓ「…Aは真逆だからさぁ」
花「しんにとっては厄介かもね」

そんな言葉には首を捻った。

Aが厄介?別にそういうつもりはなかったはずだけど
…そうだなぁ、けけみたいな人に好かれてめんどくさそうだなとは思うけどそれは俺に関係ないし


花「Aは肩の力を抜いて生きるっていうのの見本みたいな子だからね。
　ちょっとまぶしいんじゃない?」

Ｓ「あー…そうね、そうかも。こう、日常の中の非日常みたいな子だよ。異分子?みたいな」
花「いやぁ〜やめて分子とか〜!!頭痛いわそろそろ」


けけと花と夏代とゆりんくん
ゆったり時間は流れていたのだ。俺もその中の１人―１つの分子として―穏やかに生活していた。

３人で音楽愛好会をつくってから３年目の春、いぶとくーらーとれをるが入った。

いぶは夏代にべったりだったし、くーらーは花のおもちゃになったし
れをるはすげぇかわいい。妹みたいで新鮮。始めこそ物珍しくていじってたけど、今じゃもっと世話してやりたいなんて思ってる


それだけだったら、俺の平穏な生活は変わらなかったかもしれないけれど


―――部のメンバーのベクトルをあちらこちらにずらしたやつがいた。
少なからず俺も“変わって”いる気がする。

ゆりんが何かに必死になってるのも
夏代が気にかけているのも
けけが取り乱すのも

見たことのない友人たちの一面。そしてそれもまた、新鮮だ。


花「これだけ色の濃いメンツをいっぺんに受け止めてる。魅力的だわぁ、掘り出し物ね。」


新鮮だ
だけど俺にはそんなもの必要ない。

ただへらへら音楽して、へらへら女の子と遊びたい


乱されては不愉快なのだ

俺の“普通の生活”。



**けけさんメジャーおめでとうございます

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