常夏《赤》 (ページ13)

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#13 ページ13

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「でもさー？」

『ないったらないの。
実紅、飲みすぎ。大丈夫なの？』

「へーき！きょーはのむの！」

『もう言葉が平仮名じゃん。呂律回ってない。
今日は今日はって、飲む日がほぼ毎日じゃない』

「だってえ、」

机に突っ伏す実紅を見たのも、入社してから何回目になるだろう。

多分、結構見てる。

企画書のコピーを終えたあと、ストレスが多いらしい実紅に見事に捕まって今に至るんだけど。

まあ、愚痴が止まらない。
挙句の果てには私の恋だとかなんだとか。

今日こそは飲む！なんて言われたら、普通の居酒屋に行くしかないもんなあ。

ちょっとだけ、あの笑顔を見たいって思う。

「もー、そんなにすき？」

『え？』

「こいこがれちゃってさあ」

『いや、いやいやいや、恋してないし！
そもそも考えてもないから！』

「んふふ、どうだか～」

酔ったときの実紅はときどき爆弾を落とす。

しかも、核心を突くような。

「みのるといーね」

『…違うってば』

もう介抱できないくらい酔ってる実紅。

少し頬を赤く染める彼女みたいな可愛い人だったら、人を好きになっても、怖くならないのかな。

特別可愛いわけでもなく、魅力があるわけでもない。

そんな私が得たものがあるとするなら、恋愛に関する悪い運だけだ。

『実紅、寝ないで。帰ろ？』

「はあーい」

素直になれない女ほど面倒くさいものはきっとない。

『会いたい…ね』

でもそんな面倒な女にだって、ときめく言葉の一つや二つくらい、あるんだよなあ。