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「A!どうだった?」
『え、あ、まあ』
「なに照れてんの」
『照れてない』
「で!どうだったの!」
『…また、会えないかって』
翌朝。正直に伝えたのにフリーズする実紅。
いや、この話題で沈黙はつらいんだけど。
「やったじゃん!!」
『ちょ、ここ会社!』
犬か。尻尾見えそう。
そっかあ、Aもついに…なんて呟く実紅を軽く叩いて置いていく。
実紅が想像してる間柄になりそうもないことは、百も承知。
だから今のうちに一線を引いておかなきゃ。
傷つくのは、もう嫌だから。
「あ、待ってよ!」
『もうすぐで出社時間!』
「企画部」
そう書かれたプレートが下がる部屋に駆けこむ。
私を追いかけてきた実紅は倍以上疲れてるみたいで、そろーっと私を睨んできた。
『実紅が悪い』
「なんでよー…」
隣同士のデスクに戻ってまでニヤつきながら独り言を呟く実紅には、場合によって、後で軽い説教が必要かもしれない。
隣からの視線は無視して資料作りに取り掛かる。
デザインって言っても、実際に現場に行くのは営業。
企画は、文字の通り企画と構成。
モデルさんたちに合った服の考案をしたかった私に、企画部が良かったのか悪かったのかは分からない。
イメージを持てるのは実際に現場に行く営業だけど、服の詳細を決めるのは企画の仕事。
ほら、どっちもどっちでしょ。
『あ、種類で分けたんだった』
服やアクセサリー、最近はバッグみたいな小物にまで手を出し始めた会社。
そこそこ有名なブランド故に、大手企業の仲間入りはもう果たしてると思う。
そんな会社の下で働くのも、ちょっと怖い。
『中間部長、資料作成終わりました』
「お、ほんまか?早いな。
見とくからそこ置いといてもらってええ?」
『はい』
ありがとう。
さらさらな茶髪を揺らしてそう言う部長は、部内でも人気の先輩。
仕事もできる完璧雲の上の人だけど、そんな雰囲気を出さないで接してくれるのが人気の理由の一つなんだと思う。
『企画書コピーしてきましょうか』
「ええの?ほなこれ頼んでもええかな」
受け取った企画書の量は決して少ないとは言えない。
でも任せてもらった仕事くらいはちゃんとやりたい。
って、思うんだけど。
『…はあ』
何種類かある企画書を分けていて痛感する。
先輩の作ったそれを見たら、私が雑用係になる意味がよく分かるような気がするから。
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