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「家におるんですか?」
『あ、いえ、今は。もうすぐで着きますけど。
今日もあのお店に行ってきたんです』
「えっ、そうなん!?
うわ、俺も行けばよかったな…」
『今日は欠勤日だったんですか?』
「行きたかったんですけどね。
最近忙しくて休めてへんかったからって、無理やり」
『ふふっ、仕事熱心なんですね』
電話しながら歩いてるなんて、変かな。
しかも、ニヤニヤしながら。
「いや、そんな、単純に仕事が好きなだけですよ」
『そうですか?
何かに夢中になれるって、素敵だと思いますけど…』
「へへっ、そう言ってもらえて嬉しいです」
あっという間に家についたことに驚きつつも、会話を続けながら鍵を開ける。
このままずっとでも話していたくて。
カバンとコートを置いたら、すぐに寝室に入った。
「あの、」
『はい?』
「名前、聞いてもいいですか」
控えめに、確かめるように。
あの笑顔がしょげているのを思い浮かべたらなんだかそれもおかしくて。
ふふ、とこぼれた笑みを抑えながら口を開いた。
『黒瀬Aです。
今年から新社会人ってところですかね』
「Aさん…ええ名前ですね。
ほんなら大学出たばっかりですか?」
『はい。まだ一年目です』
「ほんまに?俺より年下かもしらんな…」
『え?』
「あ、俺、重岡大毅って言います。
大学行ってへんくて、正式に雇ってもらえたのは四年くらい前なんですけど、それなりに社会人歴積んでますわ」
いひひ、なんて独特な笑い方が聞こえてくる。
重岡さんって言うんだ。
なんか、かっこいいかも。
胸の高鳴りが、思うように抑えられない。
「Aさん」
『っ、あ、はい』
自分の名前なのに、そうじゃないみたい。
こんな甘い声で名前を呼ばれたら、返事をする声が、上ずっちゃう。
「また、会えませんか」
お店を早く出てきたはずなのに、針が指すのはもう深夜に近い時間。
照れているのか、小さくなる語尾。
鼓動がどんどん速くなる。
それは、ずるい。
『私も、また会いたいです』
面と向かって話しているわけでもないのに、ベッドの上で正座してしまう。
「会いたい」なんて自分から言うと思ってなかった。
でも気づいたら口が動いてて。
「お店で、待ってますね」
『はい』
「おやすみなさい」
『おやすみ、なさい』
ドキドキが、止まらないの。
私、重岡さんのこと、好きになってないよね?
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