【文スト】もしも君が居たのなら 三章

十一 表れ ページ12

『うわ、やっぱり溶けるのか。』



暫く待つと、何色かも分からない液体は腕の形を成した。



一気に緊張や不安が解けたような気がした。




「その腕異能かい？」




『そう、正解。』



暁月の本体は写真機、触れない限り解除は無理か…




そう考えていると国木田さんが扉を開け頭が床に着く勢いで頭を下げた。



『ちょ、国木田さん？』



「本当にすまない、探偵社員としてあるまじき行動だった。」



「俺の理想には仲間を疑うことなど書いていない。」



『顔を上げて…それは誰でも疑うよ。』



疑う探究心は実際、悪い事では無いしね。



ようやく腕の形を保った異能で国木田さんの肩を軽く叩いた。



『それに、今日から復職だし早く行かなきゃ。』





「…それじゃ、私も心中してくる〜！」



却説…共喰い編を整理しよう。



マタイ受難曲…作者はバッハ、くるみ割り人形はチャイコフスキーだな。



二つの共通点はキリストが関係している。



曖昧過ぎる情報をまとめることにし、私は乱歩さんに声をかけた



『くるみ割り人形はどんな内容だか乱歩さんご存知ですか？』



「そんなの単純だよ〜それと君は馬鹿だ！」



見知らぬうちに罵倒されたがそれはいいとして…



「お話はホフマン、曲はチャイコフスキーさ、聖誕祭前にくるみ割り人形を贈られた少女の話！」


『成程助かりました、乱歩さん有難う御座います。』




そうか…お話と曲で違ったか…でも新たな情報が手に入った。



マタイ受難曲は…キリストの逮捕、裁判、処刑、復活を書き記した。


通りでフョードルと行動が同じ…当てはめると逮捕は共喰い




裁判と処刑はムルソー…Eli Eli Lema Sabachthaniは何の意味だ？


キリストは処刑後その言葉を発した…その後復活を果たし、生き返る筈。



それとも双黒に対する挑発？



幾ら知識を繋ぎ止めても糸が解れた様に繋がらない。





希望を胸に寄せ、顎に当てた手を離した。





元々これしか無かったが…確実なのは本人に確かめる事だけか……




「Aさん、大丈夫ですか？」



伏した目を遮るように手を振り、気をかけている。



『敦くん大丈夫だよ、少し考え事してただけ。』



「嘘、Aは問題が起きたときずっと顎に手を当てている。」



『私そんな癖あったかな…』

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