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椅子に座るように促されたが、その前にと私は口を開いた。
『まえだも、よんでいいですか…?』
「勿論いいけれど、カミサマもご飯は食べられるのかい?
ああ、でも昨日もお茶を飲んでいたね。うん、前田君も呼ぶといい。」
『ありがとう、おさむおにいちゃん。』
笑ってそう言えば、治お兄ちゃんも笑みを返してくれた。
なんだか昨日よりずいぶんとご機嫌なようだ。
短刀に霊力を込めて中に放る。
「おはようございます主君、昨日よりも霊力が安定しましたね。」
危なげもなく軽やかに、前田は床に降り立った。
『うん、かしわでをうたなくても、だいじょうぶになったよ。』
「それはよかったです。
ああ太宰殿、おはようございます。」
「おはよう、前田君。」
なぜか顔を合わせて笑い合っているお兄ちゃんと前田に首を傾げつつ、前田のマントを引いた。
『あのね、まえだ、いっしょにごはんたべよ。』
「ご飯ですか?」
『おさむおにいちゃんがよういしてくれたの。たくさんあるよ。』
「…本当にたくさんありますね。」
そうなんだよね、たくさんあるんだよね。
「それではせっかくなのでご相伴に預かりますね。」
今度こそ着席し手を合わせる。
「『いただきます。』」
白いご飯も、柔らかな卵焼きも、こんがり焼いた鮭も、ごまの入ったお浸しも、豆腐の入った味噌汁も、
サクサクのクロワッサンも、香ばしいウインナーも、シャキシャキレタスのサラダも、温かなコンソメスープも、デザートの苺ヨーグルトも、
全部全部おいしい。
…おいしいけど。
『…おなか、いっぱいになっちゃった…。』
「Aちゃん、もういいのかい?あまり食べてないようだけど。」
コーヒーのみを飲んでいる治お兄ちゃんがそう声をかけてくる。
「元々主君はそんなに食べる方ではありませんから。なぜこんなに用意したのか甚だ疑問です。
捨てるのは勿体ないとは思いませんか。」
「全く思わなかったよ。
Aちゃんの味の好みを知らなかったし、どうせなら好きな物を食べてほしいじゃないか。
嫌いなものを無理に食べさせたくはないだろう?」
「確かに。」
前田が丸め込まれた…。
私はもう食べられないので、代わりに前田がどんどんと食事を食べていく。
小さな体のどこにそれが入るのかな。
『?おさむおにいちゃんは、たべないの?』
「んー、朝はあまり食べない派なのだよね。」
『でもたべないと、げんきでないよ。』
御手杵が、朝食を食べないと元気出ないっていつも言ってたよ。
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Hi! - はじめのエリスちゃんの言葉にやられました。好きです! (2019年7月14日 23時) (レス) id: f98b79cb93 (このIDを非表示/違反報告)
しの - マッジで面白いねんけど 更新待ってますね (2019年7月12日 0時) (レス) id: 5129f74190 (このIDを非表示/違反報告)
カノン(プロフ) - わさまんさん» それに気が付くとは…。知られたからには…。 (2019年6月24日 21時) (レス) id: 6b81268271 (このIDを非表示/違反報告)
カノン(プロフ) - silentさん» ありがとうございます。いいことがあって悪いことがあったら次はまたいいことが来ますよ。例えば賽子6・6とか。 (2019年6月24日 21時) (レス) id: 6b81268271 (このIDを非表示/違反報告)
カノン(プロフ) - KISH○W推し(女)さん» ちゅやはいいぞ。 (2019年6月24日 21時) (レス) id: 6b81268271 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カノン | 作成日時:2019年6月6日 19時