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『ちょっとだけでもたべよう?このたまごやき、とってもおいしかったよ。はい、おくちあけて。』
箸でつまんだ卵焼きを口元に近付ければ、治お兄ちゃんは二、三度瞬いたあとに、ゆっくりそれを口にした。
『おいしい?』
「…ん、おいしいよ、ありがとうAちゃん。」
『どういたしまして。』
治お兄ちゃんが本当に嬉しそうに笑うので、つられて私も笑った。
「…、うまく飲み干したんですね。」
『?なにを?』
「忠告されたからね。よく噛んで飲み込んだよ。」
『ごはんのおはなし?』
「そうですよ。ご飯は良く噛んで食べなければいけませんからね、それはもう、跡形もないくらいに。」
まぁ、噛めば顎が丈夫になるしね。
「はぁ、僕も良く食べましたよ。食後に運動したいくらいです。」
『えんれんじょうはないよ。』
「まぁしかたないですね。
それでは主君、何かあったらすぐ呼んでくださいね。
それから霊力の無駄遣いはしないように。馴染むのに、もう少し時間がかかると思いますから…。」
『ん、わかった。』
その後皆でご馳走様をすると、前田は戻った。
ずっと側にいてもらうには、私の霊力がまだまだ少ない。
「食後にお茶でも飲むかい?と言っても僕はコーヒーばかり飲むから淹れられないのだけどね。持って来させるよ。」
『あ、じゃあ、わたしがいれます。』
鶯丸、大包平、平野に加わって、よくお茶したから淹れられるようになった。
部屋に簡易キッチンもあるよとついて行き、お湯を沸かす。
お茶を淹れながら昨日私の眠った後のことを教えてもらった。
『え!ここおさむおにいちゃんのおへやなの?』
「そうとも。
昨日Aちゃんが僕のコートを掴んだまま離さなくてね、そのまま連れてきたよ。」
『あの、あの、じゃあ、わたし、ベッドをせんりょう…!』
図々しくも人様のベッドを占領したのか!
あの落とした黒いコートお兄ちゃんのか!
『あぁぁ、もうしわけありませんでしたぁ…!』
泣きそうになりながら謝れば、治お兄ちゃんはにっこりと満面の笑みを浮かべた。
…お兄ちゃん、昨日は全然笑わなかったのに、今日は本当に楽しそう。
「そんなこと気にしなくていいのだよ。
Aちゃんの寝顔が見れたし、それに…。」
『それに…?』
「君が治してくれたから。」
『えぇ?なにを?』
それには答えることなく、治お兄ちゃんはひどくご機嫌そうに、私の頭を撫でた。
「治ったから、君の前ではもう笑えるよ。
ありがとう、Aちゃん。」
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Hi! - はじめのエリスちゃんの言葉にやられました。好きです! (2019年7月14日 23時) (レス) id: f98b79cb93 (このIDを非表示/違反報告)
しの - マッジで面白いねんけど 更新待ってますね (2019年7月12日 0時) (レス) id: 5129f74190 (このIDを非表示/違反報告)
カノン(プロフ) - わさまんさん» それに気が付くとは…。知られたからには…。 (2019年6月24日 21時) (レス) id: 6b81268271 (このIDを非表示/違反報告)
カノン(プロフ) - silentさん» ありがとうございます。いいことがあって悪いことがあったら次はまたいいことが来ますよ。例えば賽子6・6とか。 (2019年6月24日 21時) (レス) id: 6b81268271 (このIDを非表示/違反報告)
カノン(プロフ) - KISH○W推し(女)さん» ちゅやはいいぞ。 (2019年6月24日 21時) (レス) id: 6b81268271 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カノン | 作成日時:2019年6月6日 19時