08.夜の話 ページ10
雲雀さんは首元からトンファーを離した。それが同情のように感じてしまって、心がズキズキ傷んでいる。いっそやってくれればいいのに。そしたら私は、このプリントの山をやらなくて済むから。
｢弱いくせに、強がるからこうなるんだよ｣
プリントを持ちながらそう言う雲雀さん。弱いくせに、か。その通りだと思うけど、それを認めたくない私がいた。それをどこに運ぶのか知らないけど、本来私の仕事でなかったなら、もうどうでもいい気かと思考放棄。ドアの前から一歩も動かない私を見て、一言言うと出ていった。
泣かなかった私は、よく頑張ったと思う。
＿＿群れてるやつも嫌いだけど、君みたいに弱いことを認めようとしない人間も、見ててイライラする
｢もう、嫌だ……｣
学校に行きたくなかった。もう誰とも関わりたくない。私が出来損ないだってことを、他の人といると嫌でも自覚させられる。人が怖い。対人恐怖症の私には、そもそも学校なんて向いていないんだ。
中高生は精神が不安定な時期だからって、前何かのサイトで見た。もしそうなら、私の精神はもう崩壊寸前だと思う。グラグラ、ジェンガだったら次のターンで崩れるところ。
｢ただいま｣
やけに静かだ。まさか勝手に外出したのかと焦っておばあちゃんの部屋を見たけど、おばあちゃんはベッドで眠っている。ホッとして、晩御飯をどうしようか考えた。私の料理なんてきっと大して美味しくもないのに、おばあちゃんは毎回美味しい、美味しいって言って笑ってくれる。
私の、たった一人の家族だった。
その家族のために、私は今日も和食を作る。桂剥きとか、菊花切りとか、すごい練習した。少しでもおばあちゃんの楽しみになればいいと思って。
学校に行くのも、料理も、全てはおばあちゃんのためだった。生きているけどいないも同然の両親なんかより、よっぽどおばあちゃんの方が……
｢A……？｣
｢おばあちゃん！おはよう｣
｢おはよう｣
おばあちゃんは椅子に座った。その顔は、朝と違ってどこか遠くを見ている。これはダメな時だなぁと思って、私から色々話した。
｢今日はね、学校で友達とお昼を食べてね。あと、先生から頼まれて委員会の仕事も手伝ったんだ｣
｢そうかい。学校は、たしか……｣
｢並盛中だよ｣
｢そうそう。お弁当はどうしたんだい？｣
｢メロンパン食べた｣
｢学校は楽しいかい？｣
｢うん！楽しいから、大丈夫だよ｣
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まどろみ(プロフ) - 凛さん» ご指摘ありがとうございます！すぐ修正しておきます！ (2019年3月11日 22時) (
レス) id: 2cd0a82a72 (このIDを非表示/違反報告)
凛 - こんばんは！雲雀さんの口癖は噛みじゃなく咬みですよー (2019年3月11日 22時) (レス) id: 6bfe22f21c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まどろみ | 作成日時：2019年3月10日 22時
