恋人未満の恋人【桃】season5

#212 ページ27

俺は病室の外に出て話を聞いた。

「Aは1年前の記憶を失っているらしい」

じゃあ、あいつが嘘の恋人関係を持ち出したことも。

俺とキスしたことも。告白したことも。

俺と身体を繋いだことも。全部……！？

俺は幼馴染の関係に戻ってしまったのか。

これからもっと恋人としての関係を続けて行きたかったのに。

沢山デートとかして。思い出作って。

なんなら俺は結婚すら考えていたのに。

俺は話を聞いて戻ってくるとAは気付いて話しかけてきた。

「お父さんとの話終わった？」

「……まぁな」

そんな様子に「？」と言うように首を傾げる。

そんな姿すら俺にとっては愛しいのに。

「……私記憶失ってるんだって……授業ついていけるかな」

「お前は元々頭いいんだから大丈夫だろ、俺ができる限り教えてやるよ」

「わー、それは助かる〜」

……こいつ、またマドンナの仮面を被り続けんのかな？

「お前さ、学校ではマドンナ的存在になってるぞ」

「え、そうなの？」

「まさに才色兼備が似合う清楚系の美少女ってな」

一応学校のあいつも知っておいたほうがいいだろ。

「本当の私は性格もいいわけじゃないのにね」

俺にとってはそれも今は可愛く見えるし。

「俺、今日は帰る」

「え？うん」

このままこいつのそばにいたら。

俺はきっと噛み付くようにAに口づけをしてしまうと思ったから。

深く、長く、激しく……。初めて二人して素肌を重ねたあの日のように。

クッソ……。神様ってやつがいるなら出てこいよ。

ぶん殴ってやるからよ！

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