検索窓
今日:6 hit、昨日:6 hit、合計:19,090 hit

414話 ページ49

テレビの電源が付いて。Aはザックの隣に座る。


 二人揃って見つめる画面の中に、ザアアアアア、と砂嵐が流れ始めた。静まり返った部屋の中に雑音がしばらく響いて。やがてざらついた白い画面が映し出され、ノイズの交じった音声が流れ始める。


 ──それは、どこかで起こった、何かの事件を知らせるニュース。






『──○○○州○○○の民家でガードナー夫妻の遺体が発見されました』


『──遺体には刃物で切り付けられたあとと、拳銃の弾痕があることから殺人と見られています』



 ──、─、──



『──遺体は死後一週間以上たっており、損傷が激しく、糸で不自然にぬい合わされている状態でした』


『──その近くにいたガードナー夫妻の娘であるレイチェル・ガードナーはぶじ保護されましたが……』



 ───、──



『──言動に混乱がみられるため、現在、くわしく事情聴取をしているとのことです』



 ───、────、─、── ……────、────────────……





『レイチェル、今日は少しだけ深く話してみてもいいかな』


『…………』


『大丈夫、怖れることはないよ』


『…………』





 真っ白な画面に、映し出されたふたり。


 向かい合って座る──


 レイと、ダニー。





『……じゃあ、そうだな……君にばかり聞くのは悪いから、僕の話でもしようか?』


『……! あ! こっちを見てくれたね! やっぱり君はすごくキレイな目だ!』


『…………』


『……あのね、実は僕の片目は義眼なんだよ? 生まれつき、片目がなくてね。子どもの時は、母さんがそれをひどく気に病んでた……』


『病んで、病んで、とても暗い瞳をしていたよ。暗くて、静かな目は……いつしか、子どもの僕さえ映さなくなっていった……』


『でも、僕は──そんな母さんを愛してた。その瞳が愛おしかったんだ』


『…………』


『ねぇ、レイチェル、君は──ご両親が憎かったかい……?』


『……いいえ』


『では、どうして、切ったり、ぬったりしたのかな』


『……』


『──家族が、欲しかったの』


『……そう』


『きっかけは、なんだったのかな』


『……きっかけ……? ……なんだったかな……』





 レイのうつろな瞳が、映し出される。


 そんな暗い、青い瞳に吸い込まれるようにAはじっと画面に見入っていた。


 ゆっくりとまばたきをしたレイが、顔を上げて。


 自らの過去を、語り始めた──

続編のお知らせ→←413話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (60 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
124人がお気に入り
設定タグ:殺戮の天使 , ザック
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

リア(プロフ) - ゆゆさん» ゆゆさん、コメントありがとうございます!そしてお返事が遅れて申し訳ありません……!ようやく夢主が前に進む覚悟を決めることができました。残るフロアはあとわずかですが、ぜひ最後までお付き合いください。これからもどうぞ、よろしくお願いいたします! (2021年9月25日 2時) (レス) id: d0c52e385f (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 続編おめでとうございます!!楽しみに待っていました!夢主ちゃんが、きちんと前を向いて進んでいけそうなので、ホッとしました。次はいよいよB1……。夢主ちゃんがどう動くのか、とってもワクワクしています。リアさんのペースで、更新頑張ってください!! (2021年9月4日 17時) (レス) id: 0ff7621059 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:リア | 作成日時:2021年9月1日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。