378話 ページ13
そこはまるでリビングのような一室。広い。かつてAが住んでいた家にもこのようなリビングがあった。そんなリビングの半分を覆い尽くす偽物の花々と、そんな花を怪訝な顔で眺めるAの隣にザックが歩み寄る。
「これ……造花だよ」
「……ニセモノなのにすっげぇ花のにおいだな」
ザックが顔をしかめる隣で、Aもまた同じように顔をしかめる。大量の香水を振りまいたかのような、あまりにきつい匂い。匂い相応のどぎつい色に塗られた花の群れは不自然な色彩で咲き乱れていた。
花に気を取られているAを他所に、ザックがふい、と顔を逸らし部屋の中央に目を向けるとそちらに向かって歩き出す。Aもそれにつられてふと部屋の中央に目を向けると、そこには。
「ザック……なに、それ」
ソレを見たAの声は自然と震えた。部屋の中央には三人掛けの白いソファ──血で汚れてもはや白ではない──が置かれていて。そこには手を繋ぎながら座っている『何か』があった。
歩み寄ったザックはしばらく無言でその人形のような物体を眺めると、静かに後ずさる。
「……ぬい目だらけだな……。あ? 腕がぬいぐるみじゃねぇか……口と体が引っ付いてやがる……人形かこれ……?」
ザックが眺めるその物体を照らすのは、窓の外の青白い月。どうみても人工的な、その冷たい光に照らし出された人形たちの不自然さはAの背筋を凍りつかせるようだった。
なんとか立ち上がり、恐る恐るそれらの人形にAは歩み寄る。これがなんなのか調べなければ、と言う使命感のようなものだけで強ばる足を動かした。ようやくザックの隣に並び、その人形を目の前にする。
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リア(プロフ) - ゆゆさん» ゆゆさん、コメントありがとうございます!そしてお返事が遅れて申し訳ありません……!ようやく夢主が前に進む覚悟を決めることができました。残るフロアはあとわずかですが、ぜひ最後までお付き合いください。これからもどうぞ、よろしくお願いいたします! (2021年9月25日 2時) (レス) id: d0c52e385f (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 続編おめでとうございます!!楽しみに待っていました!夢主ちゃんが、きちんと前を向いて進んでいけそうなので、ホッとしました。次はいよいよB1……。夢主ちゃんがどう動くのか、とってもワクワクしています。リアさんのペースで、更新頑張ってください!! (2021年9月4日 17時) (レス) id: 0ff7621059 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リア | 作成日時:2021年9月1日 16時