377話 ページ12
「あ、あぁ──……」
レイの顔が蒼白していくのを、Aはかける言葉もないままに見つめていた。まるで床に縫いとめられてしまったかのようにその場を動けない。揺らいで、今にも消えてしまいそうなレイから目を離すことができない。
「どうしよう、どうしよう……考えなきゃ、でも、でも……」
レイはうわ言のように呟きながら、ザックが消えていったドアを見つめている。そのドアの向こうから、くぐもった声が響いてきた。
「おい、レイ！ A！ 何やってんだ！」
ザックが呼んでいる。その声にAはハッとしてドアの方向に目を向けた。息を飲んで、歩き出す。血の跡をたどって、ザックが入っていった部屋のドアノブを握った。相変わらず動かないレイの視線が背中に突き刺さっているのを感じる。
(この部屋に、何が──)
ドアを開けようとドアノブを握りしめると、その瞬間に心臓が酷く大きな音を立てて鳴り始める。鼓動が早まるのを感じながらドアを開ければ、さらに強烈な花のにおいが、Aを出迎えた。
(なに、これ……花のにおい。すごく強くて、嗅覚が痺れてしまいそうだ──)
無意識に息を止めてしまうが、それでもなお鼻腔に入り込む花のにおい。その裏に覆い隠されたにおいにAは気がつく。これは。
(腐敗臭────)
思わず顔をしかめたAの後ろから、まるで亡霊が歩いているかのような覚束無い足取りで、レイがゆらりと部屋に入ってきた。黙り込んで何も言わない。しかし激しい動揺を隠しきれない様子で、今もかすかに震えている。そんなレイの視線は、部屋の中を物色するザックのことを追いかけていた。
「マジで家の中みてぇだな……」
ザックがブツブツと呟きながら部屋の中を歩き回る。Aは部屋の中の異様な雰囲気に圧倒されそうになりながらも、震える足で部屋に踏み込み、部屋全体を見渡した。
薄暗かった廊下に比べて部屋の中は明るい。見れば、窓の外には作り物のような大きな蒼い月が浮かんでおり、その光が冷たく部屋の中を照らしていた。
そんな月の光に照らされた部屋の奥。不自然な色の花が並んで咲き乱れている。近づくと部屋全体に広がる強い花のにおいがこれらから放たれている事と、全ての花が造花であることがわかった。
作り物のような月の光に照らされた作り物の花が、部屋の空気を冷え込ませ、異様なまでに重くする。背筋が冷えるような感覚に、Aはブルッと体を震わせた。
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リア(プロフ) - ゆゆさん» ゆゆさん、コメントありがとうございます！そしてお返事が遅れて申し訳ありません……！ようやく夢主が前に進む覚悟を決めることができました。残るフロアはあとわずかですが、ぜひ最後までお付き合いください。これからもどうぞ、よろしくお願いいたします！ (2021年9月25日 2時) (
レス) id: d0c52e385f (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 続編おめでとうございます！！楽しみに待っていました！夢主ちゃんが、きちんと前を向いて進んでいけそうなので、ホッとしました。次はいよいよB1……。夢主ちゃんがどう動くのか、とってもワクワクしています。リアさんのペースで、更新頑張ってください！！ (2021年9月4日 17時) (レス) id: 0ff7621059 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リア | 作成日時：2021年9月1日 16時
