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寄る辺なきもの 1 ページ1





自分は 王 にしかなれない。人とは違う手札を与えられたならば、その責任を全うするべき。


それが中也の自論であり、他人とは違う能力がある自覚があった彼は、重力操作という強力な異能を駆使し、向かいくる敵を潰して回った。


他でもない、自分の群れを守るためだ。


力も居場所もない『羊』達の群れを守るために立つ、力ある王様。『羊の王』。


それが彼に与えられた手札であり、王様という役割を全うすること−−−−力を振るい仲間を守ることが、与えられた手札の責任であると、中也は心から信じていた。


中也を慕う仲間を守り、自分を受け入れてくれた場所を守ることが、仕事だと信じてやまなかった。


この時『王』が孤独な存在だと、中也はわかっていなかった。


力ある者は 弱い者の心持ちを理解できない。そのまた逆も然りである。


この場合の悲劇は、純粋に中也が王としては考えられぬほど民を愛していたことだろう。


王でありながら、彼らとは平等だと信じていたのだ。


仲間の誰もが自分より劣っていない、それぞれの個性には何物にも代え難い価値があると心から思っていた。


しかし民は、中也の為人(ひととなり)ではなく、力にばかり心酔していた。平等だとは決して思ってもいなかった。


力のある中也が、自分たちのために力を使うことは当然の義務だと考えていた。


この認識の差は、中也を孤立させ、ついに一人で取り残されてしまった。


いつしか隣に隻眼の少年(太宰治)が当たり前のように肩を並べるようになったとき。


『貴方が……中原中也さん、でよろしいので?』


生まれて初めて、中也を敬称を交えて呼ぶ、弟子というものが出来た。


足立一之は、中也が知る『羊』の仲間たちとは何もかも違っている。


気安い態度など少しも見せず、うやうやしく中也を年上として敬う。人当たりがよく礼儀正しい姿は、中也の目には好ましく映った。


まだ声変わりに差し掛からない声は、中也が知るどんな大人よりも余程、冷静沈着に響く。


柔らかそうな手足は、一度見せた格闘術を三度もあれば飲み込む。


大きな黒目は弾丸の軌道も心の中も読み、抗争中の地上でも、話術と詐術がとびかう駆け引きの場でも、変わらず身軽に振舞う。


中也にとって、足立少年は守る必要のない子供だった。


足立少年の洗練された振る舞いに感心し、自分にはないものを持つ年下の子供を尊敬していた。

寄る辺なきもの 2→



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アバンギャルド・マボ(プロフ) - 更生したかに思えた先の人生でも不幸は続いて。最終的に彼は。…………という暗喩です笑笑笑笑笑笑 足立が人を初めて切った例の事件では15歳だったので、この凄惨な小説と映画を思い出さずにはいられませんでした。 (どちらかというと映画版を思い出しております。) (2019年9月9日 21時) (レス) id: 6a86a136d3 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 姫歌さん!その通りです笑笑 キューブリックによって映像化もされた、あのやべえ小説の題名をお借りしています。時計仕掛けのオレンジの主人公は、15歳の少年でしたよね。彼は非行に走って、暴力の一切を怯え嫌うようになるほどのトラウマを刑務所で植え付けられ、 (2019年9月9日 21時) (レス) id: 6a86a136d3 (このIDを非表示/違反報告)
姫歌(プロフ) - コメント失礼します。時計仕掛けのオレンジとはアントニイ・バージェス著の時計仕掛けのオレンジでしょうか? (2019年9月9日 16時) (レス) id: d8a4d97043 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 南雲藍琉さん» コメントありがとうございます!! 忙しい中読んでくださって本当に有難う御座います…色々重く受け止めないでくださいお願いします(真顔 続きができました!長い話になっちゃいましたが、のんびりとお付き合いください笑笑 (2018年7月8日 15時) (レス) id: ea18c173c6 (このIDを非表示/違反報告)
南雲藍琉(プロフ) - ここ最近は2週連続検定やらテストやらで時間が取れず、読み込むことが出来ないためコメントは控えていたのですが、そのために作者様に誤解を生む結果になっていたのなら申し訳ありません。足立くんの話は更新される度読んでいますし、これからも楽しみに待ってます。 (2018年7月7日 14時) (レス) id: 2e644448cf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2018年3月11日 18時

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