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曲は主要主題に似たフレーズが再び始まる。



葛藤を表現するように、


スフォルツァンドが瞬発的に強調する場所を集中した。



・・・卯くんの心の中が知りたい。


卯くんはきっと自分の気持ちを表現してる。


だから・・こんなに、酷く荒々しい不安なメロディーを奏でられるんだ。



音がかなり低くなり、


卯くんは細かくペダルを踏み替える。



そして場面が変わって、


今度は非現実の世界に浮いているような、夢をみているような、


ピアニッシモのメロディーが続いた。


しかしその後、


目の前の現実を突き付けられるように、3度目の主要主題が始まる。




主要主題が終わった後も、


16分音符がとどめを刺すかのようにフォルテッシモで駆けていく。



ラスト。


嵐が遠ざかっていくように、


少し緩んだ音は、卯くんの指が鍵盤から離れると同時に消えた。




『・・・・・。』




嵐が去った静寂。


少しの空白の後、



観客から割れるような拍手が起こった。



コンクールには相応しくない程の騒ぎに、審査委員長らしき人は少し立ち上がりながら顔を歪める。




私は放心して、椅子に座ってゆっくりと呼吸をする卯くんを見つめていた。



瞬発的に変わる強弱記号に対応できる技術と、


最後まで保ち続けられていた緊張感と持久力。


大きなミスタッチはなく、


その上であの表現。


・・・あの表現・・



優「すごいわね・・!」



隣でそう言った優子さんに、私はゆっくりと頷く。


すごい、本当にすごいと思う。


・・・だけど、



ステージの卯くんは立ち上がり、ピアノの前でお辞儀をする。


けれど一向に鳴り止まない拍手に目を細めて笑った。


変わらない・・・整った顔。そして甘い笑顔。


心なしか拍手に黄色い声が混じった気がした。



その時、


彼のダークパープルの瞳が、私を捉えた。



『!』



ダークパープルの瞳が見開かれる。


彼は少し唇を震わせたかと思えば、くるっ、と踵を返し、ステージ裏へ歩いていった。



『?、・・・』


優「あかり、行くよ。」


『え?』



優子さんが立ち上がってあずちゃんの手を繋ぎ、歩き出す。


そのまま階段を登って、扉へ向かっているようだった。


私はなぜホールを出るのか分からなかったが、とにかく付いて行った。



『あ、あの、優子さん?どうしてロビーに?』


優「今日の招待状送ってきたの、卯くんなのよ。」


『え?』


優「あ、ほら。」


??「あかりちゃん!」

苦しみの音→←テンペスト



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おしお - いえいえ!こちらこそ要望に応えられずすみません・・・実は要望なんて初めてですごく嬉しかったんです。本当にありがとうございました。本当にごめんなさい。 (2019年5月7日 19時) (レス) id: e698fce4ed (このIDを非表示/違反報告)
百花(プロフ) - 理由があったんですね! 何も考えずにコメントしてしまい、申し訳ありませんでした。 (2019年5月5日 9時) (レス) id: bd93b7215e (このIDを非表示/違反報告)
おしお - 他にも読者様の中に「夢主を自分の名前に変換したい。」と思っている方がいらっしゃいましたら、参考にしたいので是非コメントで教えて下さい。 (2019年5月4日 13時) (レス) id: e698fce4ed (このIDを非表示/違反報告)
おしお - 百花さん» ご要望ありがとうございます!夢主の名前を自動変換不可能にしているのには理由があるので、申し訳ないのですが少し考えさせて下さい。やり方は知った上です。本当にすみません。 (2019年5月4日 13時) (レス) id: e698fce4ed (このIDを非表示/違反報告)
百花(プロフ) - 要望なんですけど、主人公の名前、自分の名前にできませんか? (名前)って入れればその人の名前に自動変換してくれるんですけど、もしやり方わからなかったようならごめんなさい。 (2019年5月3日 18時) (レス) id: bd93b7215e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おしお | 作成日時:2019年3月5日 19時

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