◇１５◇ ページ15
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だけど、和さんは無表情のまま一言「…嫌だ」と言って。
くるりと私たちに背を向ける。
和「お気楽でいいよな、生まれつき神様が何でも与えてくれた輩は。…何の才能が無くても雇ってもらえて。みんなにちやほやされて」
智「和っ…！！そんな言い方は無いだろ！？」
和「…ふん。馬鹿馬鹿しい。潤くんさっさと仕込み始めんぞ？」
潤「お、おぉ…」
潤さんも、おーちゃんと和さんの迫力に圧倒されてしまったみたいで。
しばらくぽかーんとしていたけれど、は…っと我に返って。
慌てて和さんの丸い背中を追いかけて、キッチンに消えていった。
いつも穏やかな空気が漂っていたルミエール。
それが今朝は、凍り付くように冷く感じる。
智「あ…。翔ちゃんごめ……」
翔「っは…大丈夫です。俺もちょっと頭に血がのぼりすぎました」
おーちゃんの腕から解放されて、よろよろとその場にしゃがみ込んでしまった櫻井。
慌てて手を差し伸べる。
「だ、大丈夫…？」
翔「ああ…。俺、前からアイツとは馬が合わなくってさ。会うといっつもケンカばっか…。せっかくのバイト初日なのに、やな空気にしちゃって悪かったな？」
私の手を掴んで勢いよく立ち上がると。
そう言って、はっと力なく笑ってみせた。
「そんなことないよ…。私のために、怒ってくれたんでしょ？」
翔「……俺だけならいいけど。Aのことまでバカにする奴は、許せねぇ」
繋いだままの手が、ぎゅっと強く握られる。
櫻井の体温が私にも伝わってきて…熱い。
そんな風に思っていてくれただなんて。
すごく意外だけど_______…嬉しい。
翔「…ほら。仕事教えてやっから、早く準備始めんぞ？」
「うん…」
こんなとき、雅紀くんがいてくれたら…
もう少し、この場も明るい空気になっていたんだろうけど。
あいにく今日は午後シフトで、ここにいなくて。
ひどく疲れた顔でキッチンへと入ってゆくおーちゃんの背中を見送って。
私は真新しいルミエールの制服に着替えて、櫻井と一緒に開店準備に取りかかった。
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作者名：りま | 作成日時：2017年8月9日 2時
