彼の親 ページ31
話し始めていくらか経った頃。
外側を向いていた私はあることに気がつく。
少しばかり開けていた車庫の扉の外側に付いたミラー。それに白の車が映る。それは、家の前に止まった。
「人、来たみたいだよ?」
「親が来たかなー。ちょっと説明してくる。」
「うん、わかった。待ってるね。」
立ち上がる蓮。1人残される私。
私は人の親に会うのが苦手である。理由があるわけではない。ただただ苦手。
蓮がなんて説明しているのか気になった。あまりに時間をかけて説明しているから。親とあまり仲良くないっていう蓮が、丁寧に説明してくれているのだと考えると嬉しさもある。だから、大人しく待つ。
5分ほど経っただろうか。1人目、蓮が入って、2人目、彼の親が入る。人目見て驚く。似てるのだ、超絶的に。
「こ、こんにちは!」
立ち上がりながら挨拶をする。若干声色が裏返り、恥ずかしくなりながら席につく。
「こんにちは」
蓮の笑顔とは違う、浅く微笑みながら挨拶を返してくれた。
そしてすぐに家へ上がっていく。
私はすぐに思ったことを口にしてしまっていた。
「海月くん……すごく似てるね、母親似なんだ。」
私も口にしていたことに驚く。独り言に近い形で言葉を発していた。
「うん、よく言われる。弟は違うけど、姉と俺は完全に母親似。」
先程から会話する度に、くしゃりとした笑顔で物言う蓮。なんだかテンションも上がっているようだ。
そんなテンションを繋ぎながら、私の愚痴も聞いてくれた。そのおかげか、雰囲気も悪くなることなく、話すことが出来る。
「あとちょっとバレなかったら会えたかもなのにね。あそこで逃げればよかったかな。」
苦笑しながら、終わったことを悔やみ、あの時そんなこと出来ないことも分かっている今の私なりに、夢を語る。それを続ける。
「初めて……あんなことしたの。勇気でなくてさ、いつもどうなっちゃうんだろうって先ばかり見て……どうやったら軽く考えられるんだろうな。海月くんがすごいと思う。」
彼はいつでも「なんとかなると思う」って思いながら今を生きている。そう聞いたことを思い出し、嘆く。
彼の返事はこうだった。
「俺だって中学まではそうだったよ。うじうじしていつも考え込んでた。高校上がってからだから。」
「私も……なれるかな、そうやって。」
投げやりに、呟く。
「大丈夫だよ、きっと。」
そして蓮はまた微笑んだ。
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あずきいろ
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作者名:ぺんぎん(。・θ・。) | 作成日時:2018年1月16日 18時