PARACAGE 9th【ars】 (ページ23)

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303.わざと。ページ23

暫くペコペコし合って、何だか可笑しくなって、フフッと笑い合ってお互い頭を上げた。

「あの...とても素敵なショーでした」
「えっ！ありがとうございます！」

アキラさんがニノくんに「やったー！褒められた！」って自慢げに言ってる。
そして「着てくれるモデルが良かったからかな？」って雅紀くんに笑った。

でも雅紀くんは、私の肩に両手を乗せたまま

「服が良いんだよ」

って、穏やかに返す。
アキラさんも「やっぱり？」って、片眉をキュッと上げて笑う。

「雅紀...じゃなくて、咲！今日はありがとね」
「うん、俺も楽しかった」
「さて！私はすぐにロンドン戻らなきゃ」

「もうロンドンに？」ってニノくんが不思議そう。

「帰って結婚式の準備があんのー」

アキラさんがウフッて笑う。
思わず振り返ると、雅紀くんはニコニコしてる。
ニノくんは「マジ？結婚すんの？」って驚き顔。

「そー、結婚すんの！カズも幸せになってね？」
「大きなお世話ー」
「咲も...って、咲は充分幸せそうだね！」

アキラさんにそう言われた雅紀くんは、肩に乗せてた手を離したと思ったら今度は両腕で肩を抱きしめてきた。
所謂これは、バックハグってやつですか…？『俺じゃダメか抱き』ですか...！？

「咲じゃなくって、雅紀が幸せなの」

耳元で雅紀くんが笑ってる。
アキラさんは「ややこしいなぁ」って笑った。

「あ、私ちょっとまだスタッフと打ち合わせあるんだった！早く帰りたいのにー！」

フンって不服そうに言ったアキラさんが「じゃ、私行くね！」と手を挙げる。
そして私を見て、微笑み会釈。

バイバイ！と振られた左手。
その薬指には、指輪が光っていた。

「なぁ、相葉さんは知ってたの？」
「ん？」
「アキラの結婚」
「うん。さっき聞いた」

雅紀くんは、ずーっと私の肩に絡みついてる。
これはどうするべきなんだろう...分からないまま、棒立ち。

「アキラ、わざとAの前で結婚のコト言ったのかもねー」

ニノくんが腕組みをして、ボソッと呟く。

「元カノが結婚しちゃえば、安心じゃん」
「ちょっとニノちゃん、言い方が露骨」
「何、間違ってないでしょ？あれはきっと、アキラの心遣いよ」

フフッと笑ったニノくんが「ってゆーかお前らいい加減離れろや！」って今度はクワッと怒った。

「ニノちゃんも幸せになってね？」
「うるせーわ！」

華やかな舞台のバックステージで、私達はテラハウスと変わらない空気で笑い合った。