PARACAGE 9th【ars】 (ページ22)

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302.バックステージ。ページ22

ずっと捕まえられてる手をどうにか離そうとブンブン振ってみるんだけど、全然離してくれない。
どこにそんな力を隠してたの！

そんな感じで抵抗してると

「さーきくんっ！」

ニノくんが聞いた事も無い可愛い声を出してギョッとする。
その辺りに居る女性達が、ニノくんを見て少しだけ色めき立った。モデルを見慣れてる人達を見惚れさせるって...何なの。

片付けや着替えで、バタバタと慌ただしいバックステージ。
その中でニノくんは、ふわふわーっと小走り。もちろん私も引っ張られてるから小走り。

「あー、ニノちゃーん！」

控え室の奥の化粧台でメイクを落としてた雅紀くんがこっちを見て手を振る。
...って待って、バスローブにヘアバンドは待って。その姿は心の準備できてない。

「おい、何隠れてんのよ」
「あ...いや、いや...」

ニノくんの背中に必死で隠れてたんだけど

「Aちゃん！来てくれたんだ！」

いつの間にか側まで来てた雅紀くんが、ニノくんの背後で隠れてる私の顔を覗き込んだ。
バスローブ...！胸元がっ...！

「おつっ...お疲れ様ですっ…！」
「お疲れ様ー、ありがとね」
「じゃあ、私はこれで...」
「え？もう帰るの？」

コクコク頷いてると、隣でニノくんが小さく「あ...」って呟く。

「アキラ、お疲れ様」

そして、フフッと笑いながらそう言った。

「カズ、ありがとー！お疲れ様ー！」

イェーイ！ってニノくんとハイタッチしてるその人から、私は無意識に目を逸らしてしまう。
やってしまってから失礼な態度だったとは思ったんだけど、そっちが見れない。

「ん？カズ、この子は彼女？」
「え？コイツ？」

何だかんだで掴まれたままだった手をグイッて持ち上げて、ニノくんが首を傾げる。

「ちっがうよ！」

その手を雅紀くんにグイッと引っ張られて

ふらついた私の背中は、彼の胸にポスンとぶつかった。

「Aちゃんは、俺の彼女！」

後から私の両肩に手を乗せた雅紀くんが、ちょっと怒ったような声を出す。
「おーれーの！」って、繰り返されて膝から崩れ落ちそう。

アキラさんが、私を見て目を大きく開き笑った。
心臓がギュウ...ってなる。何だろう、これ...。

「初めまして、黒崎アキラです」
「あ...初めまして、寺坂Aです」

ペコッと頭を下げたら、アキラさんも深々と頭を下げてくれたからなかなか顔を上げられなくて、そんな私達を見てニノくんが「アナタ達は何やってんの？」ってケラケラ笑った。