PARACAGE 9th【ars】 (ページ12)

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292.時差ボケ。←1.18 ページ12

「でも何か、恥ずかしいけどね」

絡み合った指先を見ながら、雅紀くんはクスっと笑う。

「だって、すっげぇ格好付けてる写真いっぱい見られちゃってたんでしょ？」
「その時は格好付けてると思ってなかったけど...」
「あ、過去形。今は思ってんだ、格好付けてるって」
「だって、普段の雅紀くん見ちゃってるから」

どーゆー意味だー！って、私に頭突きした彼はその直後に大きなアクビをした。

「あ、時差ボケ？眠たいよね」
「うん。でも明日と明後日はお休み貰ってるから大丈夫」
「そっか」
「Aちゃんは？」
「どっちも仕事...」

連休は、こーゆー時に欲しいのに！
何で今日が休みで明日も明後日も仕事なの！

「そっかぁ...残念だけど、仕方無いね」
「うん...」
「仕事なら、Aちゃんそろそろ寝なきゃじゃない？お風呂入ったりしちゃった方が良いでしょ」
「あ...そうだね、そうしよっかな」

私達は一緒にリビングを出て、階段を上がる。
鳶色のドアの前で彼は立ち止まり、チラっと廊下の反対側を見た。

「...ちゃんと話しとこっかな...」
「雅紀くん...？」
「潤ちゃんは厳しいけど、滅多に怒ったりしないの。なのに俺、怒らせちゃった」
「......」

雅紀くんはそのまま紫色のドアの前まで行き、コンコンとノックする。

「潤ちゃん、俺。雅紀。起きてる？」

ドアの向こうから「何」と低い声。

「ちょっとだけ、良い？」

暫く間があって、内側からドアが薄く開いた。
私からはその中は見えなかったけど、雅紀くんは私をチラっと見てから「おじゃまします」って入って行きドアは閉められた。

・

翌朝、ダイニングには誰も居なかった。
いつもなら潤くんが朝ご飯を作ってたり食べてたりするのに。

「......」

二人はどんな話をしたんだろう...。
あの後、私がお風呂から上がっても紫のドアの向こうからは人が喋る声が静かに聴こえていた。

「はよー...」
「あ、ニノくん。おはよ」
「コーヒー...」
「え？」
「淹れるんでしょ？オレにも淹れて...」

ふわぁぁ...と大欠伸してニノくんはダイニングテーブルに突っ伏した。
低血圧男子、やっぱり私は萌えない。

二人分のコーヒーを淹れてダイニングに戻ると、ニノくんはほっぺたをテーブルにつけたまま眠たそうな目でゆっくり瞬き。

「いつも以上に眠たそうだね」

少し笑って彼の前にカップを置くと「寝不足...」と呟いて

「隣の部屋からボソボソ喋り声が真夜中まで...」

ハァ...と溜息。