PARACAGE 8th【ars】 (ページ14)

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259.揺れるシーツ。ページ14

何もやる気が出ずに、縁側にゴロンと寝転がる。
二ゴが私のお腹に沿うように、モゾモゾ動いた。

こんな事なら仕事に行ってる方が、ずーっとマシ。
何も考えなくて済むし、仕事終わりにアカリと飲みにだって行ける。
本当に、心底『いらない時の連休』だ。

二ゴの背中を指先でクリクリしながら、窓の外を眺める。
物干しには、ベッドシーツが風でたなびいてる。
誰の部屋のシーツなんだろう。
見た感じ、真っ白のコットン。

ボーッと揺れるシーツを眺めていると、そこに翔さんが両手をパンパンと払いながら歩いて来た。
パーカーとジーンズ姿で。

そして、縁側でゴロゴロしてる私を見て少し驚いた表情をして外から窓を開ける。
さすがに目の前に翔さんが来たのにゴロゴロしたまんまではいられなくて、急いで起き上がった。

「Aさん、今日もお休みだったんですか？」
「はい、無駄に連休で...翔さんは何をされてたんですか？」
「僕も休みでシーツを干しに出たら、庭の落ち葉が気になったのでついでに掃除してました」

お休みなのに働き者...。
そのシーツ、翔さんのだったんだ。
そう言われると、真っ白のシーツはとても翔さんっぽい。

彼は、縁側に腰掛けて自分の膝に1枚貼り付いていた枯葉をサッサッと手で払う。

開け放たれた窓から冷たい風がビュウッと部屋に吹き込んだ。

「さむー！」
「アハハッ！部屋の空気を入れ替えましょう、少しだけ我慢してください」

なかなかスパルタ。
でも少し、気持ちが良い。

「そう言えば、雅紀の見送りには行かないんですか？」
「見送り...は、一応しました。さっき」
「空港には行かない？」
「遊びに行くんじゃなくてお仕事ですもん、...邪魔になっちゃいます」

そうですか、と翔さんは静かに笑う。
私も「そうですよ」と笑った。

「それに、今生の別れでも無いですしね！」
「まぁ、確かに一週間経てば帰ってきますからね」

寒かったのか、二ゴが部屋の奥の方へ歩いて行く。
庭ではシーツが揺れる。

「ちゃんと、伝える事は出来ましたか？」
「えっ...」
「Aさんの気持ち、雅紀に言えましたか？」
「えっと...」

ついこの間、潤くんにも同じように訊かれた。
雅紀くんに自分は彼女なのか、聞けたのか？って。

どちらも、訊けてない自分。
自分が逃げてる事を痛感する。

「言えなかった？」

いつもより砕けた言葉で、翔さんが問う。

頷くと、彼は少し眉毛を下げて「そっか...」と呟いた。