失楽のウンディーネ 6【イナイレ】

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だって彼女、どこの子か分からない子供を拾ったのよ？


怜悧な彼女が、そんな足のつきやすいことをするはずないじゃない、と。


確かにそうだ、あの子供の身元が沖縄にあるのであればすぐに大問題になる、翠さんなら分かっていたはずだ。


「監督も二言目に是というくらい、彼がエイリア学園からの刺客だということを疑わないなんて。


あの二人が警戒しなかった筈がはずがないわ。


スパイではないと思うの、ただ……どこか引っかかるのよ」


「……私も、翠さんは疑いたくない」


スパイが、私たちの為になるようなアドバイスをするはずない、と。


詳しく話を聞くと、福岡で彼女が勝つために今の雷門に何を求めたかを零したのだそうだ。


「あの後、鬼道君にもちゃんと言ったのよ。


アイツらしいなって言ってた」


そう、彼女にはお節介だと自身が分かっていたとしても言うような性質(たち)がある、私達に悪意があるのなら、普通はそんなことしないのだ。


改めて翠さんを見た、流石に見過ぎたのか、彼女は少年を撫でながら不思議そうな顔をしていた、何だかこちらが照れくさい。


「なんだか途端に、罪悪感が湧いてきちゃいました」


「……そうね、この話はなかったことにしましょう」


今日の夜までには、鹿児島に着いていることだろう、そうなればきっと彼女はまたキャラバンが止まるまで眠るに違いない。


けれど、その少年を拾ったことで、何かしら薄幸そうな彼女に、いいことが起きてくれればうれしいなあ。

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