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「なんか、少し不格好だな」
「そうだな。
市販のものでは無いだろう……」
部品さえあれば普通に作れるような至って普通の砂時計だ……誰かが作ったのだろう。
とはいえ、素材自体はいいもので、黒漆だろうか、何だかシックで綺麗だなあとぼんやり眺める。
そう言えば、自分のものについて深く考えたことは無かった。
記憶を失う前から私の部屋にあったものなら記憶を戻す手がかりもあるかもしれないが、1度漁ったこともあるし、少なくともファクターとなるそれが見つかりそうもない。
「紅茶を淹れる時に愛用していてな……。
そう言えば、こうやってちゃんと見たことは無かったよ」
よく映える白い砂がサラサラと流れていく。
「へー……？
おい、それ裏になんかある」
「？」
下から見てみると分厚い蓋のようなものがあった、だがもう片方の部分と厚さは均等だったので気づかなかった。
不思議に思って捻って開けてみると、中から小さな石が1つ、黒い紐に通されたそれが蓋の上にのっていた。
蓋自体は薄いもので、カツンと音が鳴る。
「石、と言うよりは貝だな」
砂時計の裏には螺鈿細工が施されている、不格好とは言えど、本当によく出来ているものだった。
「螺鈿細工か……」
「何だ？それ」
「貝殻の裏側って、綺麗だろう、それを貼っつけたりしたものだよ。
貿易が盛んだった時は、日本はよくこういった細工をして売り出したものが高価に売れたんだ」
螺鈿細工と言えば琉球螺鈿か、沖縄なんて行かないだろうしな……そもそも、手がかりなんて無いだろうし……。
そう言えば吹雪士郎が私のことを知っていたっけ、周りに気が取られ過ぎて1番重要なことを忘れていた、迂闊。
話している間に砂が流れきったようで、3分が経った、砂時計を置いて、蓋の上に乗った雫型に削られた貝をどうしようかと考えながら紅茶を淹れた。
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作者名：久坂朧@三色団子と朧は神 | 作成日時：2020年9月17日 21時
