Another:菱田 ページ46
「……知っているというよりは、小泉がらみで接点を持ったという感じだな。お前たちも知り合いなのか」
「まあ」
「しししし、しっ知り合いだよ!悪い?!」
藤田の言葉に泉が動揺している。知り合いでなければなんだと言うのか。顔を赤らめて狼狽る泉の姿から俺は一つの結論を導き出す。
……それは俺にとっては不都合な結論だった。自分自身、この感情への確信はまだない。ただ、この動揺を悟られたくはなかった。普段通りの冷静を装い、じっと藤田を見つめる。
藤田は泉の言葉に小さくため息をついていた。
「悪いとは言っていないが。……確かに今日は見かけていないな」
そんな俺たちの様子を見ても、藤田は表情を変えなかった。泉の反応は些かわかりやすいものだったけれど、藤田に汲み取る気が無いのか、そもそも気付いていないのか反応は無い。ただ、普段と変わらないその対応に俺は少しだけ胸を撫で下ろす。
藤田は少し思案をすると首を傾げると、こちらを見て口を開く。
「……探しているのか?」
「明治座で観劇した後から行方が分からなくなっていて、まだ仕事に戻ったという知らせがありません。俺と泉が明治座、鴎外さんと川上さんが日比谷公園にいないか確認することになってるんです」
「今日出掛けた目的地が明治座だったから確認に来たんだけど、この様子じゃいないだろうね。だから警察に何か情報がないかと思って声をかけたんだ。それにあんたは妖邏課だろ?あの子は魂依だから物の怪がらみの可能性もあるし、早く見つけたいんだけどさぁ……」
泉の言葉に俺はため息をついた。
物の怪がらみだった場合、魂依である泉や芽衣はともかく何の力も持たない俺にできることはないだろう。それが歯痒い。
危険を伴うとしても、芽衣を頼るべきだったのかもしれない。自分が此処に来たことが果たして正解だったのか。負の感情が自分の中で渦巻いているのがすぐにわかった。
「まあ見つけたところで、物の怪関連の場合は対応できる人がいないと助けられない可能性があるけど」
思いを口に出すと思っているよりも低い、落ち着いた声が出た。声色の冷静さに自分でも驚く。
頭は落ち着いていて、心はとても焦っているという矛盾した状況。
自分でその言葉を言いながらあの子が、Aの存在が自分の中でとてつもなく大きくなっている。そう確信した。
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小崎相良(プロフ) - 閃光のまりあんぬさん» コメントありがとうございます!不定期な更新ですみません(>_<)藤田さんカッコいいですよね!少し不器用な優しさにキュンときます(o´艸`) (2020年2月20日 9時) (レス) id: b334f4b37a (このIDを非表示/違反報告)
閃光のまりあんぬ - とっても面白いです!! 更新頑張ってください! 楽しみにしてます☆ ちなみに私は藤田さんファンです…! (2020年2月19日 23時) (レス) id: 68c769878e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小崎相良 | 作成日時:2019年8月13日 19時