Another:岩崎 ページ38
時は遡り、空が橙色に染まりきった頃。
研究室へ帰ろうと車を走らせていると前方にAさんを見かけた。普段のお酌の装いとは違い、落ち着いた色合いの服を身に纏っている。その姿は女学生のように幼く、見ただけではお酌として働いているとは思えない程だ。そのあどけなさと落ち着いた性格との差が彼女の魅力でもあるのだろう。
私は一声かけようと車を止める。
「こんばんは、Aさん」
『へ？あ、岩崎さん！こんばんは』
声をかけるとAさんは足を止めて挨拶とお辞儀を返してきた。相変わらず、一つ一つの所作から育ちの良いお嬢さんだ。こちらも車に座ったままお辞儀を返すと、彼女の隣を歩いていた男が足を止めていることに気づく。
『岩崎さんはお出かけですか？』
「いえ、仕事の帰りですよ。Aさんはどちらに？」
『白山？です！太郎さんがそこで私の知り合いを見かけたらしくって、つれて行ってもらうんです！』
Aさんは普段より少し興奮気味で嬉しそうに話す。そわそわとするその姿に心が温かくなった。
「そうですか。今日はお酌の仕事はよろしいのですか？」
『仕事の時間までには置屋に送ってもらう約束になっているので大丈夫ですよ！気遣っていただきありがとうございます！』
そう言って彼女は頭を下げた。
太郎と呼ばれたその男が何か言うかと思ったが、特に口を開く様子はない。ただ黙って私とAさんの会話を聞いている。
その表情は笑顔だったが、私には笑っているようには見えなかった。
貼り付けたような表情に違和感を感じ、太郎と呼ばれた男が気になる。私は車から降りて2人の前に立った。
「太郎さんでしたか？はじめまして。私は岩崎桃介と言います」
「おう！」
「……失礼ですがお名前は？」
「ん？俺は太郎だ」
「苗字はお持ちではないのですか？」
「え、あー・・・悪いな！俺は山田太郎っつうんだ」
自らの名前を名乗る事に対して言い澱む姿に、不安を覚える。
この男が何かを企んでいる気がした。
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小崎相良(プロフ) - 閃光のまりあんぬさん» コメントありがとうございます！不定期な更新ですみません(>_<)藤田さんカッコいいですよね！少し不器用な優しさにキュンときます(o´艸`) (2020年2月20日 9時) (
レス) id: b334f4b37a (このIDを非表示/違反報告)
閃光のまりあんぬ - とっても面白いです！！ 更新頑張ってください！ 楽しみにしてます☆ ちなみに私は藤田さんファンです…！ (2020年2月19日 23時) (レス) id: 68c769878e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小崎相良 | 作成日時：2019年8月13日 19時
