第拾陸話＿誘い ページ18
芽衣さんの後ろには鴎外さんがいた。
いつの間に来たんだろうか。
「僕の家に来ないかい？」
『！』
「鴎外さん！」
「君は家に帰れないのだろう？子リスちゃんも同じなのだよ」
『こ、子リス？』
「私のあだ名なんです」
「芽衣の頬は子リスのように膨らむからね。しかし、どうだろうか？提案として悪くはないと思ったのだが。僕にはAちゃんの事情はわからない。1人預かるも2人預かるも変わらないし、今は部屋も余っている。実家に帰るまでの居場所として、我が家を使ったらと思ったまでだよ」
『……』
願っても無い申し出だ。
……なんと器の広い人なのだろうか。
会って間もない、しかも変な服を着た他人を招き入れてくれようとしている。
ありがたかった。
頼りたいと思った。
しかし、“家に帰れるようになるまで” という言葉が私の中で引っかかる。
私が帰れるようになるには、再び時を超えなければならない。
……そんなことが可能なのか？
ここに来るきっかけを作ったのはナイルさんだ。今はその張本人とは連絡を取る手段がないので、帰る方法はわからない。あの人と連絡が取れるかもわからなければ、そもそもこの時代にあの人もいるとは限らない。
という事は、だ。
家帰れるようにならなければ、ずっとお世話になることになってしまう。それは申し訳なさすぎる。
ありがたい申し出だが、気軽にお願いして良いようなことではない気がする。
言い澱み悩んでいると「それじゃあさ」という声が後ろから聞こえた。
驚いて振り返ると、そこに立っていたのは音奴さんだった。
「うちで働かないかい？」
彼女はにっこり笑ってそう言った。
『音奴さん……』
「あんた、いい顔してるからさ。行くとこないなら、うちで働くのはどうだい？お世辞にも給金はあんまり高くはないけどさ、住む場所と食べるものは保証してやれるよ？」
そう言って音奴さんはこちらを見つめた。
この世界にいる期間がどれくらいになるのかわからない以上、暮らす術を身につける必要がある。現代に戻るまでの間に住む場所と食事の保証が必要な私には、うってつけの提案だった。
『ここで、雇って頂けるんですか？』
「今の時期は猫の手も借りたいってほど忙しいんだよ。芸者を目指すかどうかは別としてさ、お手伝いでもしてくれるとありがたいんだけどね？」
数分の沈黙。
決断するのは私だ。
『…………あの、鴎外さん、芽衣さん』
.
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小崎相良(プロフ) - あららさん» コメントありがとうございます！私も芽衣ちゃん好きです！こちらこそ、これからも宜しくお願いします！ (2019年6月30日 20時) (
レス) id: bb37bfea9e (このIDを非表示/違反報告)
あらら - めちゃくちゃ面白いです！めいちゃん好きなんで話に出てきて嬉しいです！これからも更新を楽しみに待ってます！ (2019年6月29日 23時) (レス) id: 3866ce7f97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小崎相良 | 作成日時：2019年6月15日 0時
