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第64話 ページ17

主人公side




「ふえっくし!」



鼻を啜りながら、煙草を咥え直す。
そのまま乱れた髪をかき上げ、組んだ足に肘を付く。

どっかで誰か俺の噂をしているのだろうか?



まぁ、そんな事はどうでもいい。顎に手を添え、咥えた煙草の煙を吸い込みながら、俺はこの一週間を振り返っていた。


嬉しい事にこの度、俺は桜乃ちゃんと恋人になれた。

だが、付き合ってこの一週間。
今までの女とやる事やってきた手の早いこの俺が、あのキス以降何も手を出せていなかった。

勿論、アクションは起こしてる。
手を繋いだ。腕は組んでくれなかったが、肩は抱けた。……悔しいことに腰は身長差的に抱けない。

抱きしめようとすると、下手な演技で顔を赤くさせて逃げていく。


ただ単に、桜乃ちゃんが純粋無垢でその先に進めない。



「まぁ、そこがいいんだけどよ」



そこが可愛い。そこが愛おしい。

だが健全な男子高校の欲求はとてつも無く、俺は常に欲求と闘っている。


因みに、こうして俺を悩ませている可愛い彼女の大事な試合が、ここから遠目でも伺えるコートで行われていた。
そして俺はこの喫煙スペースがある木陰で涼みながら、疎らなオーディエンスが騒然としているコートを眺めている。


本当だったら、近くで観たい。


しかし、欲求と闘っている中でこの口に咥えているコレの誘惑に勝てなかった俺は、肺に溜まって煙を吐き出しながら無駄に良い視力を駆使して彼女を見ていた。


やっと、俺の元に落ちてきた桜乃ちゃん。
普通なら、手に入らない真っ白な彼女を手に入れた。

濁りきった俺と正反対の彼女。
そんな彼女を、自分勝手な欲求に従って傷付け逃がす訳にはいかない。

遠目からでも分かる彼女を只々見つめ、煙草の煙を吸い込む俺は、溜まった紫煙を吐き出すと同時に口角が上がって仕方がなかった。



「俺のモノって、感じがする」



遠目からでも分かるんだ。
彼女は、俺で染まり始めてるって事。


手にしているのは俺の『ラケット』で。

一方的な『試合運び』は、俺が教え込んだ。

そしてみっちりと仕込んだ俺の『フォーム』は、彼女を輝かせている。



彼女がずっと俺好みの純粋なままでいれば、俺は俺を保ってられる。

乙女の様に白を汚す趣味はない。




白は、白のままでいるからこそ綺麗なのだ。









「あー……。俺だけに縋れるくらいに、ならねぇかな」



吐き出した紫煙は、小さく落とした言葉と共に周りへ溶けて消えていった。

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バンビ(プロフ) - 真理さん» 現在更新のペースがかなりゆっくりになってしまっていますが、時間を見つけて更新をしていきますので、今後ともよろしくお願い致します。 (1月25日 23時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
真理 - バンビさん» 続きまだですか? (1月24日 7時) (レス) id: e1f8464f5a (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - リコさん» ありがとうございます。今後も楽しみにして頂ける様に更新していきます。 (2021年7月18日 11時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
リコ(プロフ) - 続きを楽しみにしてます! (2021年5月9日 6時) (レス) id: 8b5e530447 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - 紗衣さん» ありがとうございます。非常にゆっくりな更新になっていますが、楽しみにして頂ける様に頑張ります。 (2021年4月10日 0時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:バンビ | 作成日時:2020年9月4日 12時

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