第65話 ページ18
リョーマside
「桜乃ったらリョーマ様みたいだったのよ!」
教室にそんな声が響いた。
声の主は堀尾といつも言い合いをしている彼女のもので、話題に主である竜崎は困った様に笑っている。
「そんな嘘言ってんじゃねぇよ!な!越前!」
「なんで俺に同意を求めるワケ?」
いきなり肩を組んできては耳元で声を張り上げる堀尾。
いつも些細な事で、この煩い二人の言い合いが始まる。堀尾が言い返した後は決まって小坂田が堀尾に詰め寄ってより煩くなるんだ。
そんなの嫌だ。絶対に。
耳元で煩くされるのは嫌なのも、こうして同意を求められて巻き込まれるのも嫌。俺は直ぐに堀尾の腕を下ろしその場を離れようとした。
「だってあの竜崎だぜ?越前みたいにってのは無理があるだろ?」
俺の肩から腕を下された堀尾は悪びれもなくそれを言ってのけ、金切り声を上げる小坂田に襟首を締め上げられていた。
俺は何故か、堀尾に対して何も言わない竜崎の方へと視線を向けていた。泣くか、それとも困った様に笑うのか、気になったのもあるのかもしれない。
「そうかな?私、最近試合に負けてないんだよ」
視線の先には、戯けて笑う竜崎がいた。
思わず、俺は目を見開いて竜崎を凝視してしまう。だって、俺の知っている竜崎ならこんなこと言わない。
こんな生意気なこと、言わない。
「じゃあさ、都大会観に行ってみようよ!」
「そうだね!男子テニス部と対戦予定が違えば、一試合くらい観れるだろうし!」
そう言ったのは今までの竜崎みたいに困り笑いを浮かべるカチローだった。カチローに続くようにカツオもそんな事を言い出して、俺が竜崎の言葉に驚いている間に試合を観に行く約束をしていた様だった。
「堀尾くんもそれでいいよね?」
「ま、まぁ!実際目で観れば竜崎の下手さが分かるだけだろうけど!」
「なんですってぇ!」
また始まる言い合いを、竜崎は楽しそうに見ている。仲裁に入るカチローとカツオが困った様に笑っていて、俺はただ一人ぼんやりと竜崎を眺めていた。
「ねぇ、竜崎」
「なぁに?リョーマくん」
俺の知っている竜崎は、鈍感でドジで。気が弱くて打たれ弱い。……嫌がらせに涙を流してる奴だったじゃん。
「アンタ、変わったね」
俺のその言葉に、竜崎は笑ったんだ。
「そうかもしれないね」
って。
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バンビ(プロフ) - 真理さん» 現在更新のペースがかなりゆっくりになってしまっていますが、時間を見つけて更新をしていきますので、今後ともよろしくお願い致します。 (1月25日 23時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
真理 - バンビさん» 続きまだですか? (1月24日 7時) (レス) id: e1f8464f5a (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - リコさん» ありがとうございます。今後も楽しみにして頂ける様に更新していきます。 (2021年7月18日 11時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
リコ(プロフ) - 続きを楽しみにしてます! (2021年5月9日 6時) (レス) id: 8b5e530447 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - 紗衣さん» ありがとうございます。非常にゆっくりな更新になっていますが、楽しみにして頂ける様に頑張ります。 (2021年4月10日 0時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バンビ | 作成日時:2020年9月4日 12時