第7話 ページ10
春歌side
「今日からAクラスの担任になります。
月宮 林檎です。気軽に林檎先生って呼んでね」
うふっ、と笑ってウィンクひとつ。
すごく様になっていて、びっくりした。
確かこの学園の先生って全員現役の男性アイドルなんだよね。
女の子のようにしか見えない先生を、どうやったらあんなにも女の子らしくなれるんだろうとまじまじと見つめてると、どこからか先生をちゃかす声が聞こえだす。
けれど先生はそんな声を軽く流し、お返しと言わんばかりにそのまま自己紹介を、とさっきちゃかしていた女の子を指名した。
「渋谷 友千香、15歳。
歌も演技も完璧な実力派タレントを目指してます！
座右の銘は臥薪嘗胆。キャッチコピーは『萌えろ、いい女』以上、よろしくゥ！」
そう自己紹介をした渋谷さんは律夏ちゃんの隣の席だったようで律夏ちゃんと楽しそうに笑っていた。
もう女の子のお友達まで作ってしまう律夏ちゃんはすごい……。
「はい。ありがと。
じゃあ、次は隣の席の、あなた。よろしくね」
「はい！七海 律夏、15歳。
作曲家志望です！立派な作曲家を目指して頑張ります！よろしくね！」
誰もが可愛いと思う笑顔で自己紹介をした律夏ちゃん。こそこそと聞こえてくる賞賛の声にわたしも頷いた。
先生は律夏ちゃんと仲良くなった男の子2人を指名して、数人の自己紹介を終えたあと、わたしに指を向けた。
「じゃあ、次は……そこのあなた！」
「はっはいぃ！
七海……春歌……です。作曲家志望です。
よろしくお願い致しまふっ」
噛んだ……。
よりにもよって自己紹介で噛んでしまった。
恥ずかしくて顔が熱くなる。
みんなの視線が集まり、コソコソと声がする中、わたしは縮こまるように席についた。
「ねぇ、七海ってさっきの元気の良かった子と同じ名字だよな？」
「姉妹？にしちゃ地味だなぁ」
「はいはい、次行くわよ〜」
わたしはそのまま、恥ずかしくて顔があげられないまま、自己紹介が続いていった。
最後の自己紹介をした一十木くんはギターを弾きながら歌う。
彼の歌を聴きながらなんて楽しそうに歌うんだろうって恥ずかしさで熱い頬に触れながら聴き入っていた。
「よかったわよぉ。
技術的にはまだまだだけど、とっても素直でまっすぐな歌声ね」
先生に褒められる彼がすごく羨ましい。
自己紹介が終わり、先生は学校の説明を始める。
わたしはまだ続く恥ずかしさの中、聞いていた。
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作者名：バンビ | 作成日時：2020年9月13日 22時
