第23話 ページ26
音也side
「あれ?七海の名前ばっか……って妹の方か」
レコーディングルームの予約を取りにきた際に目についたのは沢山書かれた同じ名前。綺麗な文字で書かれたその名前は同じクラスの女の子のものだ。
自分のパートナーである律夏の妹である彼女は、あのトキヤよりも成績が良いのだというSクラスの女の子とパートナーらしい。
「すっごく努力してるんだなぁ」
教室でも大人しい彼女は、見かける度に譜面と睨めっこしていて教室に仲良く話している人はいない。
友達はちゃんといるのかなとか思ってしまうけれど、いつも譜面に向かっているから声掛け辛いんだよね。
友達でもない俺が話しかけるのもおかしい話なんだけど、何故か気になっちゃうのはなんでだろ?
「……今の時間レコーディングルーム空いてるんだ」
ぽっかり空いた所に自分の名前を書き、空いているレコーディングルームの鍵を手に取る。
律夏の妹だから気になるのかな?
そんなことを考えながら俺はレコーディングルームへと向かった。
Aside
彼女が使っているレコーディングルームに入れば、床には散らばった譜面。
ヘッドホンを着けて機材を弄り、真っ白な譜面をシャーペンで書き殴っていく姿は原作でも映し出されなかった彼女の姿があった。
散らばった譜面は、原作にある楽曲の譜面ばかり。
本来ならパートナーになった際に紡がれる6人の楽曲が、今後春歌が生み出す数々の楽曲の譜面が散らばっている。
「……これも違うっ!」
春歌の甲高い声がレコーディングルームに響いた。
シャーペンを床に投げつけ、ぐしゃぐしゃと丸めた譜面を投げる。わたしの足元に転がる紙を、思わず拾いあげた。
徐にヘッドホンを外し、椅子に座り込んだ春歌。
そんな見たことない姿の彼女が丸めた譜面を広げると、その音に気付き勢い良く振り返った彼女が酷く驚いた表情でわたしを見つめている。
「や、夜久さん……」
唇を震わせながらわたしを呼んだ彼女は、床に散らばった譜面を慌てて掻き集める。
まるでわたしに見られない様にするように。
わたしはそんな彼女の姿に呆然としながらも、手元でしわくちゃになった譜面に目を落とした。
そこにあったのは、今の彼女には作曲できない筈の彼らがデビューした際に作曲された譜面。
「見ないでください……、まだ、まだ出来てないんです」
そう消えいるような声をあげた彼女の集める譜面の上にぽたぽたと大粒の雫がシミを作った。
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作者名:バンビ | 作成日時:2020年9月13日 22時