[d!]紫煙の感覚を知っている。 (ページ13)

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「っは〜、煙草吸いてぇ…」

テンションが爆上がりした奴らが騒ぎ散らす前に解散することにしたらしい。
みんな自分で帰れるくらいには酔い潰れていないので、さっさと割り勘していた。

「Aは誰が送るの？私こいつ送ってくから無理！」

とAさんの同僚が言う。抱えているのは既に寝ているAさんの友達。
成程。友達がさして多くないAさんは困るのだ。
…コネシマさん、酒弱いからなぁ。起きていたら、きっと真っ先に立候補していることだろう。
ラッキー、くらいに思いながら、俺がAさんを送ることを伝えた。

「せんぱーい、家の住所言うてください」
「んんあ…しょ…ぴ……」

意識が朦朧としている。酔っ払いに聞いてもダメよな、そりゃ。
仕方ない。俺の家で一晩泊まらせよう。…仕方ない、なんて考えても俺は寧ろそうなることを望んでいた。あわよくば、なんて。

タクシーに乗り、俺の住所を告げる。
車に揺られながら、Aさんをじっと見た。
この人が俺より年上とか、信じらんないよなぁ。
時刻は11時。もう真夜中になるのにAさんと一緒に居ることに、なんだか嬉しくなった。
お金を払い、タクシーから降りる。ここから部屋まで歩かなければいけないのだが。

「Aさーん。俺に掴まれますか？」
「ん…」

おんぶの形でAさんを背負い、部屋に向かう。
エレベーター階段を上り、カチャカチャと扉を開けた。
暗い家の電気を点けて、靴を脱いで上がる。
Aさんをソファーに座らせてから靴を脱がせて玄関に置いてくる。

「…Aさん、起きれますか？」
「ふ…ん…ん？しょ…ぴく？
あえ…」

Aさんは目を擦り、目を開く。

「…わぁ、しょぴくん。どし…たの」

酔いも醒めてきたAさんは、俺を見て驚いたようだった。

「どうしたの、じゃないです。
風呂どうしますか？化粧は取っといた方がいいと思いますけど」
「…ここ、しょっぴくんの家？」
「そっすけど」
「わぁ…ごめんねぇ。私お酒弱いから…飲まないようにしてた筈なんだけどなぁ。
じゃあ、お風呂借りるね」

Aさんは立とうとしたが、またソファーに逆戻りした。

「…連れて行きます。場所も分かんないですし」
「ごめん…」

良いんすけど、別に。役得ですし。
なんて言ったら、多分下心が丸見えだろうから言わないでおく。
生憎、俺はお姫様抱っこなんてできないから肩を貸す。

Aさんに風呂の使い方を教えて、俺は服を取りに向かった。